先進諸国の、
「弱い国の人々が飢えて死んでもどうせ我がメディアは報道しないので放置しても大丈夫。つまり、それはないも同然のこと」
という姿勢が最近では明確になっています。
少なくとも、私は(ドキュメンタリー番組ではなく)テレビのニュースで、このことを報道しているのをまだ見たことがないので、このまま黙殺を続けるつもりかと思います。
環境や食糧の国際会議も裏でうごめく営利の影が甚だしく、虚しいものです。
それはともかく、全世界的な食料問題が起きると考えざるを得ない要因は昨年から継続していますが、大体次のような要因ではないでしょうか。難しく書くのは嫌いなので簡単に書きます。
・異常気象(干ばつ、洪水、日照不足、気流の変化、海流の変化、海水温の変化、他)
・受粉の危機(ミツバチ、コウモリ、スズメ、風、水などの受粉媒体の減少や変化)
・経済危機による農家の疲弊と廃業
・遺伝子組み換え作物による農地と作物自体の荒廃
などです。
そして、ここに「主要国の人々の食べ物への価値観の崩壊」というのが一番大きな問題として存在していると考えています。要するに、日本人を含めて「食べ物を軽視している」ということです。
この、主要国における食糧をめぐる一種イビツな関係は、アメリカの現状を表すこれらの記事やニュースで表されると思います。
たとえば、アメリカでは、フードスタンプという食糧配給券で食糧を得ている世帯が7世帯に1つまで膨れあがっています。
» 「フードスタンプ」受給者が急増(2009.12.02)
にあるニューヨーク・タイムズ紙の英文記事では、「アメリカでのフードスタンプの利用者は3600万人を超えている」となっていて、多くの人々が食べ物を自力では手に入れられない状況にあるとあります。
こんな状況なのに、
» 米国 増加する食品廃棄(農業情報研究所 2009.11.26)
にあるように、アメリカでは「今や、年に150兆キロカロリー、一人一日あたりにして1400キロカロリーの食品を廃棄している」という異常な事態になっています。日本の現状を見てみると、多分アメリカでもそうなのでしょうが、デフレで食べ物がどんどん安くなっていて、安価でどんどん買われて、どんどん食べずに捨てられている。
1400キロカロリーといえば、日本人の小食の人なら一日分の食糧に相当する人もいるでのではないでしょうか。食べ物は人間にとってもっとも貴重なもののはずなのに、それがゴミのような扱いを受けている。
そして、全世界を見れば、きちんとしたデータなどないでしょうが、たとえば世界食糧計画の10月22日のプレリリースの数字を引用すれば、「世界の飢餓人口は10億2000万人」となっています。世界の6人に1が飢餓に直面している計算となりますが、国単位で見れば、もっと深刻な国はたくさんあるでしょうし、先進国の一部のようにそんなに飢えていない国もあるでしょう。
上の方に挙げた、異常気象や経済危機などの問題を一気に解決する方法など今のところないのですから、一番できることは、わりとはっきりしていて、「食べる量を少なくして、食べ物を大事にする」ということではないかと今は本当に思います。
グルメや大食いで楽しんだ時代は確かにあって、それを否定しませんが(私も大食いは見るのが好きでした)、その役割は終えたと思います。また、現在の「食品栄養学」というのも正しいとか間違っているということではなく、その役割は終えたような気がします。
今、国際米価が上昇していて、また、中国などでも投機筋の吊り上げによって、ニンニクやトウガラシなどの異常な価格高騰が起きています(インフルエンザに効くというのは投機のための流布のようです)。
動物を殺さないで作る人工肉のこと
食料に関してはあまりいいニュースはないですが、もしかしたら少し希望があるかもしれないニュースがありました。
オランダで、世界初の人工豚肉の生産に成功したという記事です。これは「生きている豚の筋肉細胞」と「動物の胎児の血液からの栄養分」で人工肉を作る方法で、動物を殺すことなく肉を作る方法のようです。
» 【オランダ】世界初の人工豚肉の生産に成功(ベルギーニュース 2009.12.02)
> 実現すれば1頭の家畜から100万頭分以上の食肉を作ることも可能になる
とあります。
上に書いたアメリカで一日に捨てられている「1400キロカロリーの食品」の中には肉もあるでしょう。ただ殺されて食べられることもなく捨てられるのでは、一体動物は何のために生まれてきたのか・・・。
いずれにしても、「食べ物を大事にしましょう」と、私たちが子どもの頃に教わったことをちゃんと思い出すだけでも少しは違うのでは・・・と思ったりする近頃です。