UP! その2 - Earth Files に「超新星とガンマ線バースト」という記事がアップされていましたので、そのことを追記しました。(2010.01.18)
宇宙のことを調べたりしていると、顔が「ヒッ」と引きつるような画像や説明に当たることがあります。これはガンマ線バーストのページを読んでいた時にあったものですが、この写真。
説明を読まなければ、何の写真だかわからないですが、こうありました。
「1999年1月23日に起きたガンマ線バースト GRB 990123 の可視光での残光。残光の上部に伸びるフィラメント状の天体はバースト源が属していると思われる銀河。この銀河は別の銀河との衝突によって形が歪んでいる。」
とあるのですが、問題は後半のこの部分です。
> この銀河は別の銀河との衝突によって形が歪んでいる。
ひいい・・・ orz
そんなことが起きるですか。
この「歪んでいる部分」の広さはわからないですが、ここに何億くらいの数の星があって、それらはどうなってしまったのだろうと考えると、少し気が遠くなります。そこに生物たちがいたなら今はどうなっているのか。
ガンマ線バーストの放出が近いベテルギウス
今回は前回の記事の「大量絶滅」という物騒な記事の中に書いた中で引用した、約4億3500万年前に起きたとされるオルドビス紀末の大量絶滅の原因という学者がいる「ガンマ線バースト」のことを書いてみます。
ガンマ線バーストなんて書くと物々しいですが、ガンマ線という放射線が星の爆発などによって大量に宇宙に放射される現象で、現象自体は頻繁に起きているのだそうです。
ただ、地球の近くでは、数億、数十億年に1度程度のものではないかと。
そして、今、これに近いことが起きようとしているようです。先日、2010年の1月10日に朝日新聞の科学欄にこのような記事がありました。
» ベテルギウスに爆発の兆候 大きさ急減
「オリオン座の1等星「ベテルギウス」で、超新星爆発へ向かうと見られる兆候が観測されている」で始まるその記事には、時期はともかく、この星の寿命が近いことが書かれています。
気になるのは、
・直径は太陽の1千倍
・距離は地球から600光年
なのですが、さて、このくらいのものだと、超新星爆発を起こしても、4億3500万年前のようなことにはならないのか。あるいは地球に影響がある可能性はあるのか。
前回の記事で挙げた、「4億3500万年前の大量絶滅の原因が超新星爆発によるガンマ線バーストにある」と発表したカンザス大学の研究者たちによれば、
> 6000光年以内で起こった超新星爆発によるガンマ線バーストを地球が受けた
とあり、「地球から6000光年」という遠距離を含めても地球に影響があったと考えている研究者たちがいるわけで、このベテルギウスほどの巨大な星での距離600光年というのはどう考えればいいのか。
超新星爆発の際にガンマ線の放出によって周囲が受ける影響を、こちらのページの説明から抜粋しますと、
・超新星爆発を起こした恒星から半径5光年以内の惑星に住む生命体は絶滅
・25光年以内の惑星に住む生命体は半数が死に
・50光年以内の惑星に住む生命体は壊滅的な打撃を受ける
となっています。
この書き方からすると、これは「直接的な影響」のことなのでしょうね。ガンマ線というのは、人間(他のあらゆる生物も)の DNA を傷つける作用があるようで、致死線量も決まっています。つまり、50光年以内だと、直接、体(DNAなど)が破壊されてしまうということなのかもしれません。よくSFやモンスター映画などである「ビビビ」と光線を発射されて、「あああ」と死んでいくという感じになるのでしょうか。
では、なぜ、4億3500万年前の地球では、6000光年という距離が出てくるような遠いところでからのガンマ線バーストで大量絶滅になった可能性があるかというと、それは「オゾン層の破壊」ということらしいです。
ガンマ線バーストにある記述からその過程(シミュレーション)を簡単に書いてみます。
・6000光年以内で超新星爆発が起きる
・この爆発で地球に約10秒間ガンマ線が降り注ぐ
・これによって地球大気のオゾン層の約半分がなくなる
・消滅したオゾン層の回復には少なくとも5年を要する
・オゾン層の破壊によって、太陽からの紫外線が地上や海・湖沼の表面近くに生息する生命の大半を死滅させ、食物連鎖も破壊される。
という流れです。(たった10秒の放射で地球のオゾン層の約半分が消失!)
つまり、「即死」ではない方向性です。
6500万年前の恐竜の絶滅も、もしかすると、隕石や超巨大火山の噴火等が要因で、地球の気温が下がったことにあるという説もあるように、このガンマ線バーストの場合も、「徐々に」滅亡していくようです。
というのも、ずいぶん以前、記事に書いたことがありますが、現時点ですでにオゾン層は大きく損なわれていて、オーストラリアあたりはかなり薄くなっているところもままあるようですが、それでもオーストラリアの人は生きていて、自然も残っています。オーストラリアの自然環境が最近なんだか変なのは確かですけれど・・・。
▲ 1979年と2009年のオゾン層の破壊の進行度合いの比較。青くなればなるほどオゾン層は薄くなっています。つまり、紫外線などの有害光線がすでに地上にバンバンと降り注ぎ放題になっていると思われます。
いずれにしても、朝日新聞にあったように、今、ベテルギウスは超新星爆発の準備に入っていて・・・とはいっても、星の歴史の話ですから、それが明日か何万年後かはわからないですが、いつかは爆発します。
その爆発による地球への影響はカンザス大学の研究を見る限りでは、「微弱にしてもある」ということのようです。
そして、私は思うのですが、そういうこと(ガンマ線バーストなど)があった時に、(滅亡に)拍車をかけるのが、環境破壊などによって進んでいる「生き物の弱体化」なのではないかという気はします。ナラ枯れの現状(こちらに全国ナラ枯れ情報)や、次々と消えゆく小動物たちの報道などを見ていると、ここから先、強い力に「スッ」と背中を押されると、バタバタと絶滅していくのではないのかなと。
超新星爆発によるガンマ線バーストはその手助け(?)になるのではないのかなあと考えた次第です。
宇宙からは他にもいろいろとやってきます。
特に地球と太陽系にとって大きな問題となりそうなのが、太陽系が磁場で圧迫されつつあることです。これは、ヤスの備忘録の記事に詳しく書かれていましたが、このことは理解がとても難しいことで、自分でうまく理解できて、わかりやすく説明できたら書きたいと思います。
[追記]現在の世界の気温の実際のところ(2010.01.16)
本記事とは関係ないのですが、いつもコメントをくださる Over60 さんが気象庁発表の「北半球中緯度帯の顕著な寒波について」という、とても興味深いPDF資料のリンクを紹介してくださっています。
2009年12月から最近までの世界的な寒波についての発表なのですが、その中に「30日平均の気温偏差」という図が載せられています。2009年12月12日から2010年1月10日の30日平均気温平年偏差というものを表していて、この図ですが、これが面白いです。
「-1.83」を下回ると30年以上に 1 回の低温(濃い青で表されている場所)、「1.83」を上回ると30年以上に1回の高温(濃い赤で表されている場所)となっていて、この世界的な寒波の中、どこもかしこも寒いのだろうと思って見ていると、赤の部分、すなわち、「30年以上に1回の高温」の地域もたくさんあるのです。
この地図から見ますと、
・カナダ東北部からグリーンランド方面
・南米大陸の東北やメキシコの一部
・トルコ、エジプトなどアラビア半島北部周辺
・アフリカ大陸北部
・樺太の一部
などが、この1カ月ほど「30年以上に1回の異常な高温」だったということがわかります。
全世界が寒いというわけではないようですね。
やっぱり気候の分布が変わってきているような気がします。
[追記2](2010.01.18)
昨日、 Earth Files に「超新星とガンマ線バースト」という記事がアップされていました。
Death Stars: Supernovae and Gamma-Ray Bursts
ちょっと読んだんですが、私の英語力と科学知識では内容がよくわからないです。途中で挫折しました(笑)。宇宙の話で超新星とかガンマ線が絡むと、理解するだけでも難しいのですが、もし何かわかれば、ご紹介します。
記事の下のほうには、「45億年前からの地球の歴史」の年表なんかもあって、何やら大ごとになっています。
これです。
表の下の方の「Ordovician」というところに赤線が引かれていますが、これが記事でもふれた、4億3500万年頃に終わったオルドビウス紀のことで、この Earth Files でも、この時に「ガンマ線バーストで地球で大量絶滅が起きたのではないか」ということが書かれています。
実証が難しい時代の話で、まだわからないことの方が多いですが、同じことはある程度、繰り返しながら地球の歴史はきていますので、こういうことがまた起きる可能性は「ない」と言えないとは思います。むしろ、(星は必ず寿命を迎えて、そういう星は数億年単位では必ず地球の周辺に現れるでしょうから)いつかあると考えるのが普通なのでしょう。