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2010年02月13日


気候を支配するものたち1 - 北大西洋振動 (NAO)

[※]どう簡単に書こうとしてもどうも難しくて、しかも、どんどんと長くなってしまって、はっきり言ってとてもわかり難くなってしまいました(苦笑)。でも、まあ書いたのでアップします。


前回記事で、いつもコメントをいただく Over60 さんから、季節 - 数十年スケールからみた気候システム変動という論文を紹介していただきました。日本大学文理学部地球システム科学科の山川修治という教授が書かれたもののようです。

これは、私のように気象に関しての概念がない人間にとっては大変に参考になるもので、気象や気候に興味のある方には是非読んでいただきたいと思います。簡単とは言い難いですが、「気候が作られていく理由や変化する理由」というものが漠然とながらもわかります。また、現在の異常気象の原因もこれで少しは理解できるかもしれません。宇宙からの影響がどうしたというようなことを先日、私は書きましたが、宇宙からの影響以前の知識として、こういう地球上の天候の一般知識を知ることがまずは大事かとも思います。

ちなみに、私などは気候変化の原因というと、エルニーニョ現象とか最近流行の北極振動くらいしか知らないのですが、気候変動に影響を与える現象として知られているものには、

・北極振動
・エルニーニョ・南方振動
・マドン・ジュリアン振動
・北大西洋振動
・太平洋数十年振動
・準2年周期振動
・対流圏準2年周期振動
・太陽活動

など、たくさんあるようです。
多くに「振動」という単語がつきますが、この文書によると「振動とは周期性をもって繰り返される現象のこと」だそうで、つまり、それぞれ周期の期間は違っても、「繰り返される」というもののようです。サイクルですね。最近、地球や宇宙を牛耳るあらゆることに「サイクルの存在」を感じますが、気象変動などにもサイクルが存在しているような感じを受けます。

今回から、この「季節 - 数十年スケールからみた気候システム変動」を少しずつ紹介したいと思います。私自身が、完全に無理解のところからスタートしているので、最後に行き着くには時間がかかるかもしれません。

今、世界で起きている異常な気象の原因や、あるいは、これからの地球の気象といったものを、私を含めた一般人がみんなで考えていくというのも、それはそれで楽しいことのように感じます。

今回は、私たちの住んでいる地球の「北半球」の気候形成に大きな役割を果たしているという、北大西洋振動という現象について。

なお、地球の気候(地域差になど)ができる基本的な理由ですが、「対流圏」と呼ばれる地表から上空12kmくらいまでの高さまでの空気の層があり、この層が「地域によって厚さが違う(赤道に近づくほど暑くなり、両極に行くほど薄くなる)ことで、空気の対流が起きて、気候の変化や地域差というものが起きるようです。

taiki-ken.gif

地球の対流圏というページにあった、宇宙から地表までの構造を示す図。気候はこの一番下の「対流圏」で起こされているとされています。


そして、気候の変動に影響すると考えられている大きな要素は、

・大気の構造と循環
・成層圏の循環
・太陽活動の影響
・海面水温変動が関連する数十年サイクルでの気候変動


などになっているようです。


北半球の大半の気候を司る北大西洋振動(NAO)

「離れた2つ以上の地域で気圧がシーソーのように伴って変化する現象」をテレコネクションというらしいのですが、すべての「振動」とつく現象はこのことによって起きているようです。「いくつかの地域で気圧がシーソーのように」、つまり、一方が高ければ一方が低いというように相関して変化することによって起きる現象です。

北大西洋振動も大気と海洋の相互作用によって発生するもので、起きる場所が違うだけで、エルニーニョ現象などの概念と同じようなものと考えるといいのかもしれません。

この北大西洋振動は、主に北半球の気候形成に大きく関係しているようで、たとえば、日本では「オホーツク海高気圧」というものが出現すると、初夏に低温下しやすいそうですが、その形成にも関与していることがわかってきています。

この北大西洋振動は、指数として数値化されていて、

・南北気圧差が平年値より大きいと正(プラス)のフェイズ
・南北気圧差が平年値より小さいと負(マイナス)のフェイズ


となるようで、これによって、偏西風(上空12〜16kmのところを吹いている強い西風)の強弱が変化し、正フェイズと負フェイズでは、真逆の気候になっていくようです。

13_03.jpg

地球科学のせかいというページにある、シンプルでわかりやすい偏西風の図。


冬には、特にヨーロッパや中東などが北大西洋振動によって、直接的な影響を受けるようなのですが、後述しますが、そのヨーロッパやユーラシア大陸の冬の気候が、夏の東アジアの気候にも影響するようで、このあたり、なかなか壮大な話なのです。

要するに、気候というのは原因をひとつずつ上に探っていくと、小さな1地域の天候でも、その原因はどんどん地球全体のレベルに向かっていくというような部分はあるようです。


いわゆる「地球温暖化」という概念はこの「北大西洋振動」の1988年頃からの「正フェイズが長く続いた状況下でのもの」のもとで作られた概念だったようにも思われます。正フェイズでは、ヨーロッパ、中東などでは高温と干ばつが進行し、ロシアや中国北部なども気温が上がるようです。逆に、この活動が負フェイズの場合はヨーロッパ諸国やロシア西部、北アフリカ、アラビア半島などは寒冷化していくようです。また、韓国や日本などの東アジアでも寒冷化した冬となる傾向にあるそう。

こういう事例が挙げられています。

1997 年 1 月、オランダでは 11 年ぶりに伝統の 200 km 運河スケート大会が開催された。それまでの 10 年間は NAO 正フェイズが優勢で、暖冬続きであったが、この冬は前年の 12 月から NAO 負フェイズへ転じ、久々の厳冬になった。


前回の正フェイズ期間が、1988 ~ 1995 年と、わりと長いものでしたので、ひとつのパターンに入ると、十数年は同じ気候の傾向が続きやすいのかもしれません。

nao-1880-1995.jpg

このグラフは 1865年から1995年までの約140年くらいの期間の北大西洋振動の状況です。プラスになっているところは「正フェイズ」で、マイナスになっているところは「負フェイズ」だと思われます。

わりと規則正しいサイクルになっているように私には見えます。上の説明にあてはめると、「北半球は大体、10年サイクルで寒くなったり暑くなったりしている」ということなのかもしれません。

(番外)上のグラフが「1865年から始まっている」ということにちょっと興味を覚えて、太陽黒点のグラフと比べてみましたが、これは特に連動性は感じませんでした。下のグラフが、1875年頃からの黒点の状況です。

kokuten1850-2000.jpg


北大西洋振動の状況から見る今後の天候

さて、今現在のヨーロッパの寒波の状況を見ると、少なくとも、北大西洋振動が「正フェイズ期間ではない」とは言えるような感じがします。そう思って調べてみましたら、北大西洋振動の現在の状況はネットで調べられるのですね。

Climate Prediction Centerというところで、過去4ヶ月間のNAO指数(北大西洋振動の指数)の推移を発表していました。
これが昨年10月から本日2月12日までの北大西洋振動の状況です。

nao-2010-02.jpg

やっぱり、マイナスですね。
昨年の12月からほぼ負フェイズのようです。

論文の中に記載されている「北大西洋振動が負フェイズの場合の世界の天候の傾向」は、

・地中海で雨が多くなる。
・ヨーロッパとロシアの西部で平年より寒くなる
・北アフリカやアラビア半島方面で大雨になりやすい
・シベリアと東アジアでは低温
・アメリカの北東部で低温


となるようです。
まあ・・・今、その通りになってはいます。

アメリカやヨーロッパの寒波のニュースは紹介するまでもないですが、他の地域の参考ニュースなどを少し。

エジプト、豪雨による洪水 10人死亡(2010年1月21日)
タンザニアで大洪水(2010年1月7日)
東欧で寒波、マイナス35度を記録 死者40人以上に(2010年1月26日)

egypt-flood.jpg

▲ エジプトの1月の洪水。北アフリカやサウジアラビアなどは最近、かつてはなかったような洪水が繰り返し起きる傾向にあります。

kenya-floods.jpg

▲ タンザニアの北に位置するケニアでも1月に豪雨による大規模な洪水が発生しています。写真は、国連 Radioより。



などで、このまま負フェイズが続く状態だと、上の地域は今後も寒波や大雨などが続きやすいということかもしれません。また、前回の期間を考えますと、わりと長い間(10年くらい)、同じような傾向となるのかもしれません。

日本の例としては、2005 年 2 月に「正フェイズから負フェイズへ一転」した際に、

新潟では 1986 年以来 19 年ぶりの豪雪となり,また青森でも 1977 年以来 28 年 ぶりに豪雪対策本部が設置された。青森の累積降雪量記録は 1005 cm に達し,1985 ~ 86 年の1263 cm,1998 ~ 99 年の 1033 cm,2000 ~ 01 年の 1027 cm に匹敵する積雪となった。


ということがあったようです。
なのでまあ・・・日本海側はまだまだ雪が降るのかもしれないですね。

日本の場合、オホーツク海高気圧というものが出現すると、 北日本の夏は涼しくなりやすいのだそうですが、この「オホーツク海高気圧の出現」にも、北大西洋振動が関与していることが最近わかったそうです。

また、「ユーラシア大陸や北極海における冬から春の雪氷状況は,アジアをはじめ各地域の夏季天候に影響を及ぼす」とあり、一見全然、日本の気候と関係ないようなユーラシア大陸や北極海あたりの降雪や寒冷状況も、日本の夏の気候に影響してくるみたいです。世界は繋がっております。

ユーラシア大陸や北極海の冬に雪や海氷が多いと、日本の初夏は涼しくなるとのことなので、今年の初夏は涼しいのかもしれません。

しかし、気候を左右するのはこれだけではないのですよ。

ご存じのエルニーニョ現象と呼ばれる南太平洋での海面の気圧の現象である南方振動や、北極と北半球中緯度地域の気圧が逆の傾向で変動する「北極振動」という現象や、偏東風の波動、そして、さらには成層圏の対流の問題、太陽からの影響の問題なども絡んで気象は変化していくのだそうで・・・ひぃぃぃぃぃぃ! 

こんなに複雑に絡み合っているものに対して、気象家の人たちは「長期予測」という形で天気を予測して発表しているのですね。

・・・・・・できるのか? 
本当に長期予測ってのはできるのか、おい!(アントニオ猪木風)


というわけで、次回はアジアとオーストラリアの気候変動に影響を及ぼす「マドン・ジュリアン振動」と、北大西洋で発生するハリケーン(アメリカなどが影響を受ける)に関係しているといわれる「偏東風波動」について書けたら書きます。これがなかなか複雑なので、いつアップできるかわかりません。

もう何のブログだかわからなくなってきた・・・(苦笑)。

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