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2010年05月18日


1997年の台湾の口蹄疫

台湾で1997年に発生し、380万頭の豚を含む総数で500万頭の家畜が処分され、事実上、台湾の養豚業が崩壊した際の口蹄疫に関しての論文がありましたので翻訳しました。

宮崎での口蹄疫に関して、報道を見ていると、初動がどうしたとか「誰々の責任」とか、そういう問題になっているようですが、メキシコ湾の原油流出もそうですが、そういう問題ではないように思います。なぜなら「今まで家畜の口蹄疫の封じ込めに殺処分対応でまともに成功した国などない」からです。つまり、責任も何もまだ終わりは見えていないと思われます。

やることは責任の問題よりも「もう一度、この病気のことと妥当な対策を考え直してみる」ということではないかと思います。

そもそも「口蹄疫」という伝染病への対策の本筋は昭和26年に制定された家畜伝染病予防法という、60年前にできた制度(家畜伝染病予防法第3条の2第1項)を少し手直ししながらそのままで来ているようです。私個人としては、「口蹄疫に対しての殺処分」という対処法は果たして妥当な対策なのだろうか? (本当は無意味ではないのか)とは思ってはいます。しかし、現実にはこれからも殺処分は進んでしまうのでしょう。


過去に口蹄疫対策として同じ家畜の殺処分政策を行った歴史の結果として以下のようなものがあります。果たしてこの殺処分という方法が「唯一の」効果のある対策と言えるのかどうか。

まず、「政府の初動対策が遅れた」として非難された、台湾の例です。

・1997年、台湾で口蹄疫発生。380万頭 (3,800,000頭)以上の豚が殺処分

という事例があります。
台湾はそれまで豚肉の輸出国でしたが、この件で台湾の養豚産業は消滅しました。

では、政府が素早く「殺処分」対策に動いた場合はどうだったでしょう。2001年のイギリスでの発生では政府素早く対策に乗り出しました。その結果。

・2001年、イギリスで口蹄疫発生。1000万頭 (10,000,000頭)の牛と羊が殺処分

というように、対策の早かったイギリスでは、もっとひどい惨事となってしまいました。

殺処分の行方はこんな感じです。

同じ方法(殺処分)を続ける限りは、多分、どの国も(日本でも)同じような経緯を辿ると思います。基本的には誰も本当の口蹄疫対策を考えないまま、たとえば、日本では、 60年前の制度にたまに改変を加えて今でも適用としているというのが現実のようです。

ちなみに、2001年のイギリスでの口蹄疫の説明にこういう部分があります。

同時期にはオランダでも小規模の口蹄疫が発生したが、予防接種によって拡大を食い止めることができた。



とあります。
このワクチン接種が一番適切な方法なのはあきらかなのに「しない」のに理由があるようですが、それは微妙な問題ですのでここではふれません。


前振りが長くなりましたが、1997年に台湾の養豚産業を壊滅させた時の台湾の口蹄疫に関しての興味深い論文がありましたので、部分的に翻訳して載せておきます。1997年の3月17日に発生して、4日目で「台湾西部全域に感染宣言」がなされ、2週間後に台湾の養豚業を壊滅させた伝播の威力がわかります。

ウイルスやワクチンの種類などの専門用語はわからないので除外しています。
下の原文にすべて書かれてあります。

UPDATE ON FOOT-AND-MOUTH DISEASE OUTBREAKS IN TAIPEI CHINA (MAY 22, 1997)

(ここから)



台湾の口蹄疫発生の最新情報 (1997年5月22日)

1997年3月、台湾で口蹄疫が発生した。1997年3月14日新竹県の養豚場での疑わしい症例を最初として、3月17日に同県で二例目、3月18日に桃園県で三例目が報告された。

二例目、三例目も養豚場で発生したものであった。すべての発症豚の蹄冠部と鼻鏡に水疱が見られた。蹄の多くは脱落した。発症した母豚から生まれたすべての新生仔豚は授乳後すぐに死亡した。これらの症例は3月19日に台湾家畜衛生研究所で口蹄疫と確認された。

3月末までには、台湾西部の15の県と市の1,300の養豚場に伝播した。台湾家畜衛生研究所は診断作業でパニック状態になった。

台湾を南北に走る中央山脈に妨げられて、台湾の東部には口蹄疫は広がらなかった。また、離島でも発生しなかった。3月21日には、台湾西部のすべての県と市が感染地域であると宣言された。

牛、豚等の偶蹄類とその生産物の輸送は禁止された。

汚染農場のすべての感染する可能性のある動物は殺処分され、農場は消毒された。口蹄疫の広がった範囲があまりに広かったので、感染群の殺処分に加え、すべての牛、豚等の偶蹄類家畜に全国的に予防接種がされることが決定された。

軍隊が豚の死体の廃棄に派遣された。

豚の死体の廃棄の方法としては埋め立てと焼却などが採用された。埋め立てが一番有効な方法だった。死体は農場、ごみ処理場、または、感染農場に近接する公有地等に埋却された。死体の処理は一日20万頭に達した。

3月中旬に政府はワクチンを300万ダース確保した。このワクチンは、台湾東部の口蹄疫に感染する動物のすべての種、他の地域の乳牛や価値の高い種豚で使用された。残りのワクチンは農家に配布された。

これが緊急事態であることと、病気を伝染させる危険性から、政府は獣医の監督の下で、畜主が自分の家畜に予防接種をすることを許可した。合計1,300万ダースのワクチンが政府から無償で生産者に提供された。

台湾東部では、ワクチンの供給が遅れたために豚を口蹄疫から守れなかった。4月21日に宣蘭県、24日に台東県、5月3日に花蓮県でそれぞれ口蹄疫の報告があった。この東部3県では病気の伝播を制御するための手段として感染農場の全ての豚を殺処分して廃棄した。

また、感染農場から周囲半径3kmを防御帯に定め、感染農場から周囲半径6kmの監視帯を設定し、全ての動物の移動制限を行った。5月22日まで、この3県では新たな発生はなかった。
今回の流行では豚だけが感染した。WRL(材料標準試験室)で行われた伝達試験の予備的な結果では、台湾の流行株を人工的に感染させた発症豚と同居した牛は発症しなかった。



(ここまで)


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