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2010年05月27日


死の海域:バクテリアに海が支配される時

YouTube で、石油流出を起こしているPB社の石油プラットフォームのあるメキシコ湾で、「現場から32キロ離れた地点の水中を撮影した」という映像がありました。

このあたりの海の中の様子を知っているわけではないので、これを見てどうだこうだとは言えないのですが、生き物が消えた海中の様子はなんとなく胸につまるものがあります。動画自体は埋め込み無効ですので、リンクを貼っておきますが、海中ほとんどが茶けて、たくさんの小さな流氷物が漂っていて生き物の姿が見えないというような感じです。

gulf-1.jpg

http://www.youtube.com/watch?v=uh8H-7AnTT8


このあたりの元の様子に関して、ほんの少し参考になるかもしれないものとして、昨年2009年の8月に、「メキシコ湾にある天然ガスのプラットフォームの下の海域」を撮影した映像がありました。今回流出を起こしたPB社のものではないでしょうが、リグという意味では同じ人工物です。昨年のこの映像では海面下でこれらの施設が人工の岩礁となって、そこでたくさんの生き物たちが生きている風景が撮影されています。

これはウミガメが石油パイプで休んでいる光景だと思います。
魚もたくさん泳いでいます。

gulf-2.jpg

http://www.youtube.com/watch?v=HHk1cgORSAI

このように何とかリグと共存していたウミガメたちも、今回ばかりはダメだったようで、ロイターによると、一昨日5月24日の時点で、150匹以上のウミガメが死んで打ち上げられているようです。また、300羽以上の海鳥やイルカなども日々死んで漂着しているようです。これらを含めたいくつかの大型生物は今回のことで絶滅することが避けられないというようなことも書かれてあります。

それ以下のサイズの小動物たちはカウントされていないので不明ですが、「食物連鎖の上位グループ」は軒並みやられているようです。

2010-05-13t222505z_01_btre64c1i8e00_rtroptp_3_environment-oil.hlarge.jpg

msbcの記事より。死んだウミガメ。まだ小さいです。




バクテリアに海が支配される時

メキシコ湾での原油流出対策として、PB社は26日からトップキル作戦( "top kill" operation )というものを開始したそうです。聞き慣れない言葉ですが、CNNによれば、

トップキルは、水の2倍の密度を持つ泥状の液体を油田に流し込んで流出を止めるもので、これがうまくいけば、コンクリートで油田を封鎖できる状態になる。

とのこと。しかし、「この作業はこれまでに地上の油田で実施されたことはあるが、海底での実施は前例がなく、30〜40%の確率で失敗する可能性があるという」との注釈がついています。

何でもやってみるしかないといったところにまで来ているのかもしれないですが、しかし、こうなってくると(原油流出の阻止がなかなかできていないという意味で)、本当に恐ろしいのは、上の YouTube での現在の海中の写真を見ても想像できますが、すでに「デッドゾーン」(死の海域)と化している海域ができている可能性がかなり強いということです。

デットゾーンに関しては「生き物の住めない海域」と説明されることが多いですが、正確には「バクテリアなどの微生物以外の住めない海域」ということになるのだと思います。このあたりのことは、いつかは書きたいと思っていて、メモばかりが溜まるのですが、何度か少し書いたことがありますが、

・守るべき対象も生き物かもしれないが、この世でもっとも恐ろしいものもまた生き物なのかも。

ということは言えると思うのです。


最近、わりと微生物のことを勉強することが多く、その強靱な生命力には驚嘆することしきりですが、しかし、「強靱すぎる」のです。ここ数ヶ月では、ギリシャの海で、酸素の不要な多細胞生物が発見され、オランダの排水路からは、自分で酸素を合成する微生物も見つけられたりといった、「それ以上の大型生物の生態系の食物連鎖をあまり必要としないように見える」生物たちが大挙見つかっています。

石油を分解するバクテリアがそこに該当するわけではありませんが、それでも、彼ら石油を分解するバクテリアであっても大量に発生した場合、他の生き物がその海域で生きることは難しくなるように思います。

そうなると、「強靱な微生物だけの海」ができます。それが、すなわち、「デッドゾーン=死の海域」となるのではないかと考えます。

ここには「海の生物ポンプ」という仕組みを理解することが必要なようなのですが、そこを私はまだあまり知らないので、少しずつ書いてみたいと思いますが、やはり今までの石油流出と今回の違いは、油田から無限にも近い石油が止まらずに流出し続けているという点なのではないでしょうか。

バイオ製品を扱うある会社のページにこのような記述がありました。Q&Aコーナーの「Q1.バイオ製品を使用した場合、環境にどんな影響を与えますか?」というところの問いに、こうありました(こちら)。


第一に、まず分解の途中経過において一旦はそのバクテリアは最大数まで増加します。しかし、そのバクテリアの食べ物、つまり分解の対象である原油の減少とともに最大数のバクテリアを維持することが不可能となります。そして、分解とともにバクテリアも減少し、原状に戻る段階ではほとんどいなくなるのです。

第二に、バクテリアの場合、動物のように食べ物を求めて他の場所にまで移動し、そこでも大量に繁殖するという心配はまずありません。
さらに、バクテリアの食べ物に対する嗜好性や、食べ物の有限性を考えると、その永遠なる異常繁殖はありえません。



これは実は逆説的にバクテリアの特性をよく現しています。

つまり、「バクテリアの食べ物、つまり分解の対象である原油の減少とともに最大数のバクテリアを維持することが不可能となります」いう部分は、もし、

・分解の対象である原油が永遠に減少しなかったら?

という懸念に結びつき、また、「バクテリアの場合、動物のように食べ物を求めて他の場所にまで移動し、そこでも大量に繁殖するという心配はまずありません。」という部分は、

・移動しなくても食べ物の範囲が勝手にどんどん広がっていったら?


ということに繋がります。

今回は、今のところはまだバクテリアにとっての「食べ物の減少」の兆しが見えていないわけで、これはかなり怖いことだと思います。デッドゾーンの広がりのスピードと、原油流出の拡大のスピードが比例した場合、世界の海の今後はなかなかスゴイのではないかと。

現在の石油流出の範囲については、 Wired Vision のメキシコ湾原油流出事故、深刻な現状にあります。

Gulf_Oil_Slick_Approaching_Loop_Current_MODIS.png

この赤系の色で染まっている範囲が確認できている流出範囲だそうで、つまり、ルイジアナからフロリダあたりの海域のほとんどが原油で満たされてきているというようにも見えます。




[追記] 石油流出のリアルタイム映像ウィジェット

PBSというニュースサイトに、 Oil Leak Widget (石油流出ウィジェット)というブログパーツみたいなものがありました。下でカウントされている数字が現在までの推定の総流出量ということになるようです。



BP 社の提供しているリアルタイムの映像のようなので、それなりに興味深いです。まだ止まっていないみたいですね。



タグ:原油流出

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