知ったのは、農業情報研究所の記事で、このページに各種報道記事のリンクもされていますが、これに関して日本語の報道はないようですので、この中のひとつを訳しました。海では原油と分解剤で海の生態系と海産物の問題、欧州では火山噴火での農作低下の懸念、・・・というような状況下で、アジアとアフリカで小麦サビ病の新たな懸念が発生したということになるようです。
「病原菌の突然変異」というのは、個人的にとても気になります。他の植物、動物、人間の病原菌でも「突然変異」というのは多々あり得るような気がしないでもありません。
(ここから)
Small Scale Farmers Vulnerable to New Wheat Fungus
IPS News 2010.05.30
新しい小麦の病菌の脅威に晒されている小規模農家
小麦を壊滅させてしまう真菌の新しい突然変異株が発見され、小規模の小麦農家が危機に晒されている。1999年にウガンダで最初に確認された小麦サビ病の病原菌 UG99 。これは、2007年にケニアで収穫される小麦の約80パーセントを枯らした強力な病原菌だ。
ここ数年は、小麦サビ病の耐性遺伝子を開発することによって、この病原菌と戦ってきたが、しかし、南アフリカのフリーステート大学の小麦病理学者で、同校教授であるザック・プレトリウス氏は、この耐性遺伝子を持つ小麦にも感染する2種類の新しい突然変異種を発見した。
「これは耐性遺伝子のうちのひとつがすでに効果がないことを意味している」と、プレトリウス教授は懸念を示した。
小麦サビ病は、小麦の茎に入り込み、植物が水と栄養分を運ぶ維管束組織を破壊する真菌だ。この組織が破壊されると植物は枯れる。
プレトリウス氏の発見は、ロシアのサンクトペテルスブルグで、6月1日〜4日まで開催される国際的な小麦会議で提示される。氏は、この新しい小麦サビ病の病原菌が非常に早いペースで、アフリカ中に広まっていく可能性があるという。小麦サビ病は、ほんの数週間で小麦収穫を全滅に導く可能性がある。
コーネル大学のロニー・コフマン博士は、新しい突然変異種はすべての農民に対しての脅威となると語った。 Ug99 は1999年に発見された後に、エチオピア、スーダン、イエメン、そしてイランにまで広がり、現在は南アジアまで広がっていると見ている。
Ug99 の突然変異種の小麦への攻撃に対抗するには、殺菌剤が有効だが、エチオピアなどの小規模農民にそれを購入する手段がないとコフマン博士は言う。
「エチオピアに今すぐ非常事態が差し迫っているわけではないが、しかし、突然変異種が存在しているのなら、爆発的流行になると思われる」。
エチオピアの Lume Wered 地区には1万3000人以上の小規模農民がいる。そして、今度の収穫期には、20万トン以上の小麦の収穫が見込まれている。
この地区に住む農民の1人は、「新しい病気については何も知らない」と語る。彼らは、過去10年の間に、小麦サビ病によっと何度も収穫を失っている。
エチオピアの8000万人の人口の80パーセントに及ぶ農民の多くは殺菌剤を購入できない。
「小麦の植え付け時期はまだだが、しかし、どんな小さな関連事件があった場合でも、農民に警戒を促すつもりだ」と、農務省の長官は IPS に話した。
(ここまで)
この Ug99 は広がり方の速さと、破壊の徹底性(ほとんどやられる)が脅威となってます。アフリカから南アジアまで数年で広まりましたが、今後の広がり方に関してはわからない部分があるようです。
過去の関連記事として、農業情報研究所の
・小麦キラー・サビ病菌 アジア主要小麦生産地に迫る 世界食料供給への破滅的影響も
2008年03月06日
・新たな小麦病の世界的蔓延に警告 世界食糧危機の恐れもー世界サビ病イニシアティブ
2005年09月10日
がわかりやすいです。



