
▲ 強風で倒された韓国ソウル市近郊の大木。しかし、今回の台風ボラヴェンでは、ソウル市内で 33本の街路樹が倒されただけでしたが、今回より勢力の弱かった 2010年の台風コンパス(台風7号)の時には、ソウル市だけで 2298本の街路樹が倒されたのだそうです。
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(訳者注) 台風15号は、米国でのカテゴリーでは最上位にあたる「カテゴリー5」に相当するとされ、日本や韓国が直撃を受ける台風としては史上最大クラスの勢力であったにも関わらず、通過していった日本の沖縄、韓国などでは、被害はあったとはいえ、当初に想定されていたほどの被害はなかったといっていいかと思います。
特に、それほど強い台風が上陸することのない韓国では、2010年に台風コンパス (2010年の台風7号)の直撃を受けて大きな被害を出していて、今回、韓国政府はそれを大きく上回る被害を想定し、警報レベルを最高ランクに上げていました。
しかし、実際には台風コンパスと同程度か、それより少ない被害だったようです。
今朝の朝鮮日報に、「どうして史上最強の台風の被害は少なかったのか」という記事が載っていました。
理由としては、
・雨が極めて少なかったこと。
・瞬間最大風速は強かったが、その時間が短かったこと
などが挙げられるようです。
今回、その記事を翻訳して載せておきます。
それにしても、台風など「特別な気象イベント」が来るたびに私は最近つくづく思いますが、すでに今の時代は台風などの特別な気象以上に、「通常の中で荒れた状況が現れる」という部分があるような気がします。
今年5月の茨城県つくば市での竜巻も、7月の九州北部での豪雨も通常の気象の中で発生したものでした。


▲ 上の2枚は、 2012年5月6日のつくば市での竜巻被害の報道より。
世界中の豪雨や、あるいは暑さによる干ばつも、あるいは今後起きる「かもしれない」異常な気温や気象も、それらも含めて「日常」として私たちは対峙していく必要があるのかもしれません。
というわけで、今回は朝鮮日報の台風の記事をご紹介します。

朝鮮日報 2012.08.29
短い時間での強風と少ない雨によって最悪の被害を免れた
超強力な台風だったはずの台風ボラヴェンの予想を下回る被害
台風15号、英名ボラヴェン(BOLAVEN / ラオスの高原の名前)は、超強力台風と言われながら朝鮮半島に上陸した。ボラヴェンは、8月28日には北朝鮮内陸地方に上陸し、その後、中国大陸に向かうとされる。
今回の台風ボラヴェンで想定していた被害は、当初の予想より小さく、台風の強度も「体感ではこれまでの台風と比べて低かった」という反応が多い。 超強力な台風だったのになぜそうだったのか。
ソウル首都圏でのボラヴェンの被害は、2010年9月にソウルを襲った台風コンパスでの死者、被災者、停電などと被害規模はほぼ同程度だった。2010年のコンパスは死者6人、今回は現時点で10人となっている。
しかし、最も大きな違いは街路樹の被害だった。 2010年の台風コンパスでは、ソウルの街路樹が 2,298本も次々と倒されたのに対し、今回のボラヴェンは 33本倒されるにとどまった。
全国的に見ても、韓国全体で 2010年のコンパスでは 1万427本の街路樹が倒されたのに対し、今回のボラヴェンで倒された街路樹は 7,461本だった。
ソウル首都圏で計測された「最大瞬間風速」は、コンパスもボラヴェンも、どちらも秒速 26〜33メートルで似ていたが、それなのに、なぜこのような現象が現れたのか。
気象専門家らは二つの理由を挙げた。
まず、強風が続いた時間の差があった。
今回のソウルでの最大瞬間風速は 30メートル前後と、コンパスの時と同じようなものだったが、ソウル市内で吹いた「最大風速」(10分間のあいだに吹いた風の平均風速)は、2010年コンパスの秒速 14m に対して、今回のボラヴェンは 10.5m と、 2010年のほうがはるかに高かった。
韓国気象庁の予報士は 、「街路樹が倒れるには、強風がある程度の時間持続して吹かなければならないが、その点で、今回のボラヴェンは 2010年のコンパスに及ばなかった」と話した。
降水量の差も大きかった。 当初、ソウル首都圏では 100〜 150ミリの豪雨が予想されていたが、ボラヴェン通過の際の実際の降水量は 0.5〜 40ミリにとどまり、コンパス( 40〜 15ミリ)よりも少なかった。