中央アジアのキルギスで「ペスト」が死者が発生したことによって、キルギスだけではなく、ロシアやカザフスタンなどの周辺国も対応に追われているという報道がありました。
▲ Telegraph より。
今回は英国ガーディアンの記事からご紹介します。
キルギスの今回のペストは「線ペスト」という種類のもので、感染した原因は、「感染した動物を食べた」ことによるものです。「マーモット」というげっ歯類の動物で、下の写真の動物です。
▲ マーモット。世界中の山岳地帯で見られますが、日本には生息していません。
食べた本人が感染してしまったのは仕方ないとしても、周辺の人にも症状が出ているようで、何らかの感染が起きているのではないかということで、今回のわりと大げさな措置となっているようです。
キルギスの場所は下の位置で、患者が出た村の名前は記事に出ていませんが、カザフスタンとの国境に近い村とのことです。
中国でも3年前に同じ状況でのペストが発生
ちなみに、3年ほど前に中国でもこの同じ「マーモット」という動物を食べた男性が線ペストで死亡する出来事を In Deep で記事にしたことがあります。
・中国甘粛省でペスト発生。男性一名が死亡
2010年06月16日
その時の状況は下のようなものでした。
甘粛省の男性がマーモットを捕食し、ペストに感染して死亡
甘粛省衛生庁は、6月15日(2010年)に甘粛省酒泉市で腺ペストが発生したと発表した。患者には緊急処置がとられたが、効果がなく死亡した。疫病発生の状況に関しては現在、すでに有効なコントロールがとられているという。
死亡した患者は41歳の男性で、甘粛省張掖市で金山道路の道路を作る労働者。現場でマーモットを捕らえて食べたことにより感染して発病した。
患者は、6月12日の午前に、人民病院で診察を受け、その時に身震い、脱力、高熱、左側の脇の下の窪みのリンパの腫れなどの症状が見られた。病院はペストを疑い、ただちに県の疾病コントロールセンターに報告し、患者を隔離した。
同日12時45分、患者は緊急処置を受けたが、効果がなく死亡した。
甘粛省の衛生庁は、臨床結果と検査、測定の結果を調査して、最終的に、腺ペストから敗血症型ペストに至った病例とした。
ペスト発生の報告を受けて、甘粛省の省政府や衛生部は事態を重視し、省、市、県は直ちに応急措置に備えて、関係する専門家を組織して現場に駆けつけ、交通機関の衛生的な検疫、流行病学の調査、接触者の追跡と管理、消毒などを行った。
というもので、げっ歯類(リスやネズミなど)を食べる習慣のない日本ではあまり考えられないことですが、げっ歯類を食べてペストに感染するという例は確かにあるようです。というか、自然界にはペストに感染した動物がわりと常に存在しているということにもつながる話ではあります。
ここから記事です。
Bubonic plague outbreak feared in central Asia
Gurdian 2013.08.27
中央アジアでの線ペストの発生への懸念
キルギス共和国で、マーモットを焼いて食べた十代の少年が腺ペストに感染して死亡し、他の3人が入院していることについて、中央アジア各国の保健当局が警告を促した。
伝えられるところによれば、カザフスタンとの国境に近い山間の村で 15歳の少年はペストに感染したマーモットを焼いて食べた後に、腺ペストにより死亡した。
キルギス共和国の緊急省は、その少年と接触した別の村から来ていた若い女性と二人の子供が首や脇などに腺ペストの特徴的な症状を見せ、高熱と腫れによりに入院したと地元の報道機関が報じた。
まだ病気の症状を示してはいない 131人の人も隔離されている。その中には、33人の医療関係者が含まれている。保健省によると、少年と接触した人に関しては隔離している。
カザフスタンとキルギス共和国との国境に関しても検疫と報告を含めて、国境管理を強化している。カザフスタンの保健省は死亡した少年と接触した可能性のある人を探している。
また、病気を媒介する動物が、キルギスとカザフスタンの間で移動する場合があるという。
腺ペストを引き起こす細菌は通常、げっ歯類の動物からノミを通じてヒトに感染するだけでなく、感染した組織と直接的な接触を介して感染することがある。
ロシアにも動きが出ている。キルギス国民はロシアに入力するためのビザが必要ないので、ロシアの地方当局は今回のペスト事件の推移を慎重に見ている。
現在、ロシア第4の都市エカテリンブルクの空港では、腺ペストのリスクのある国から到着した人のすべてに検査が施されている。
ロシアの公衆衛生関係者によると、腺ペストの症例は毎年カザフスタンで見られ、この病気はキルギス、カザフスタン、ロシアの一部に自然に存在しているという。