
▲ 2014年10月24日の news.cnr.cn より。
中国四川省の石渠県という人口 10万人ほどの小さな県で、その県の全世帯の半数以上の家庭にエキノコックス症の発症者がいる場所があることが報じられていました。
石渠というのは日本語では「せききょ」と読むそうで、中国語読みは「シーチュー」です。
場所は下の位置です。

この「エキノコックス」という単語に私が反応したのは、私が北海道の出身であることと関係しています。
北海道では、地区にもよるのでしょうけれど、
「キタキツネを見かけても絶対にさわるな」
という教えがあります。
このエキノコックスというのは寄生虫のことで、人体に入ると主に肝臓などに寄生することにより徐々に体がダメージを受け、放置していた場合の致死率は 70%にも達すると言われています。

・エキノコックス
そして、なぜ北海道かというと「基本的に北海道に多い」のです。
エキノコックス症 - Wikipedia には、
原因となる多包条虫が北海道などの緯度の高い地域(38度以北)に生息している。毎年約20名がエキノコックスに感染しているが、保健衛生指導と犬の定期的な条虫駆除で予防できる。
他に生水を飲まない、発生地の沢水や井戸水は加熱してから使用する、人家にキツネを近づけない、山菜などは良く洗うか火を通して食べる、などの予防法がある。症状が出てからの治療は困難な為スクリーニング検査が重要であり、北海道では広く行われている。
とあり、特にキタキツネに多く寄生しているとされています。
ですので、もし、北海道旅行をした場合など、キタキツネを見かけても近づかないのが賢明です。
この「症状が出てからの治療は困難」なエキノコックス症の感染者や発症者が異常に多い地区についての中国の報道を newsclip から概要をご紹介します。
中国:エキノコックス症の蔓延地区、過半数の家庭に発症者
newsclip 2014.10.28
四川省カンゼ・チベット自治州の人口 10万人に満たない石渠県は、エキノコックス症の発症率が中国で最も高く、過半数を超える 1万 2000世帯が家庭に少なくとも1人の発症者を抱えているという。
石渠県では、2005 〜 08年までに 401人が亡くなり、2007年の有病率は 14.99%に達した。
これは、世界で最も有病率の高い地域であることを意味する。
同県に住む今年 45歳になる女性は、ここ 10年のあいだに兄妹2人と従姉妹1人をエキノコックス症で失った。彼女自身も、ここ数年腹痛が絶えなくなり、しだいに腹部が膨張してきた。
4カ月前に亡くなった従姉妹をチベット族の鳥葬で見送った際、女性は従姉妹の腹部から頭部大の腫瘍がこぼれ落ちる様子を目にした。自身が一家で4人目の犠牲者になるのではという恐怖が、女性を苛んでいる。
ヒトが寄生虫エキノコックスに感染すると、体内のおよそすべての器官は、寄生幼虫の温床となる。
中でも肝臓への寄生は、症例の 70%を占める。発症までの潜伏期間は 5〜 30年に及び、感染初期は自覚症状が無い。そのため、幼虫による嚢胞が肥大化し、周囲の臓器を圧迫してはじめて感染を知るケースが多い。
しかし、その段階までくると、すでに病状は中期から末期症状に差しかかっている。感染者の5年生存率は 30%、10年生存率は 8%とされ、その死亡率の高さから「虫の癌」とも呼ばれる病気だ。
常に中国で最も貧しい地区の1つに数えられる石渠県は、海抜 4200メートルの厳しい気候がネックとなって、長く発展を妨げられてきた。街灯が整備されたのさえ、つい 3、4年前のことだ。
上下水道は依然として完備されていないため、生活ゴミが浮き、それを目当てに集まった野良犬や家畜の群が行き交う川の水を、飲み水として利用している。
四川省地方政府は予防・治療プロジェクトを開始し、井戸の敷設による清潔な飲料水の確保と、主要媒介動物である野良犬の駆除に着手した。
しかし、当初、2009年までに、水深 30メートル以上の井戸を 200基敷設する計画だったが、遊牧民の伝統的な固定観念と、乏しい財政、厳しい気候に阻まれ、2014年現在、竣工した井戸は30〜40基に留まっている。
また、毎冬関係機関にノルマを課して捕獲する野良犬にも、地元当局の財政は圧迫されている。殺生を忌み嫌う遊牧民の心情を慮り、捕まえた犬はすべて隔離施設に入れられるため、餌代などの費用がかさんでゆく。
また、四川省で最も広い面積をもつ同県に、人口10万に満たない遊牧民が点在して暮らすため、啓発活動もスムーズに進まない。



