▲ 2015年1月20日のシベリアン・タイムズより。
シベリアの極東地域で昨年 12月から降り続く、この地域としては異常な豪雪により、地域の動物たちが、場合によって全滅しかねない状態になっていることが報じられています。
場所については、今回ご紹介しますシベリアン・タイムズの記事に出てくる「ビキン川」の場所などから推測できます。
ロシアのビキン川の場所
・タイガフォーラム | ビキン川
この地図が載せられているページの説明によれば、ビキン川の上流域の森林には、
「野生動物はヘラジカやオオカミが生息」
していて、中流域の森林には、
「アカシカ、イノシシ、アムールトラ、オオヤマネコの他、ユーラシアカワウソやシマフクロウが生息」
とありますが、記事では、これらのうちの、ヘラジカやオオカミ、アカシカ、イノシシ、アムールトラなどのほとんどが死滅する可能性について記されています。
▲ アムールトラ。現在の生存数は 400頭程度で、絶滅危惧種に指定。Wikipedia より。
この地域のほとんどの動物の生存条件が、50〜70センチ以下の積雪なのに対して、現在すでに1メートルを越える積雪となっていて、冒頭の写真を見てもわかりますが、エサも見つからないし、仲間と共に行動することも容易ではないという過酷な状態となっているようです。
その報道をご紹介します。
なお、文中、「シベリアンアカシカ」と訳したものがありますが、英語の Siberian stag に対応する日本語がわからず、直訳にしているものですが、下のようなシカのことのようです。
・izhzoo
極東の冬は、まだ2ヶ月以上続くわけで、今後の成り行きが気になるところです。
では、ここから記事です。
Fears for unique wildlife as heavy snowfall reaches depths of one metre
Siberian Times 2015.01.20
豪雪により積雪量が1メートルに達し、シベリア固有の生物種たちに危機の懸念
極東ロシアにおいて、地域の生物種の 90パーセントが死亡した 1980年代の再来の危機を防ぐために、世界自然保護基金( WWF )ロシア支部は嘆願書を提出
シベリア地方での異常な豪雪が、稀少なアムールトラなどのシベリア固有の野生動物の多くを死亡させる可能性について、専門家たちが警鐘を鳴らしている。
ロシア極東地域の一部では、1メートル以上の雪が積もっており、動物たちが群れからはぐれたり、エサを見つけられないなどの厳しい状況となっている。
自然保護活動家たちは、種の 90パーセントが死滅した 1980年代の悪夢が再現される可能性があると指摘しており、また、すでに若い動物たちは次々と死亡しはじめているという。
モスクワにある WWF ロシア支部は、この異常豪雪による動物たちへの大災害を防止するための緊急措置を要求している。
WWF ロシアのコーディネーターであるパベル・フォメンコ( Pavel Fomenko )氏は、
「私は 1980年代の終わりの冬のことを今でもはっきりと憶えています。雪によって、すべての有蹄類の 80パーセントから 90パーセントが死亡したのです。私は調査チームの一員でした。それは恐ろしいことでした。アンバ谷とビキン川全体が巨大な墓地となったのです。ほぼすべてのイノシシやシベリアンアカシカ( Siberian stag )も死に絶えました」
と述べる。
「次に起きたことはさらに恐ろしいことでした。次の冬、生き残ったアムールトラたちが、村や小さな町を包囲し、犬や牛、そして、他の動物たちを襲い始めたのです。公式データではこの年に 30頭以上のアムールトラが射殺されたことを示しています」
そして、今シーズンの極東も、当時と同じか、さらにひどい状態となっている。
▲ ロシア極東の積雪が、地域の動物たちの生存条件を越えてきている。
この地域では、2014年 12月から雪が降り続き、現在1メートルを越える積雪となっている。
これは、動物たちには致命的な積雪で、シカにとって生きのびることができる最大積雪は約 30センチ程度、イノシシやシベリアンアカシカは、40から 50センチが限界だ。
ヘラジカでも耐えられる積雪は 70センチとなっていて、現在の積雪はどの動物種においても生きのびられるものではない。
そして、重要なことは、現在はまだ「冬の中間」であり、これから最低でも冬は2ヶ月間は続くということで、積雪はさらに増えるおそれがあるということだ。
シベリアン・タイガーとして知られるアムールトラは、極東地域に 400頭程度しか残っておらず、絶滅危惧種としてリストされている。