▲ 2015年1月30日の米国ロサンゼルス・タイムズより。
カリフォルニア沿岸での3年連続の異常死亡事象
アメリカ周辺の海域では、さまざまな「海洋生物の大量死」が起きていますが、今年1月に、南カリフォルニアを中心とした、公的には UME (異常死亡事象)と呼ばれる大量死が起きています。
アメリカの西海岸といえば、カリフォルニアの北部にあるオレゴン州で、数万羽と予測されるウミドリが死亡し続けているという報道をご紹介したことがありました。
・Perfect Science
このウミドリの大量死も今シーズンの冬に起きていることですが、今回ご紹介するアシカの大量死と似ている点として、「餓死が多い」ということがあります。
食べ物がないわけではないはずのに、「胃の中に何もない子どものアシカ」が大量に保護されたり、死亡しているようです。
原因については、「不明」となっていますが、カリフォルニアの異常死亡事象宣言は、今年で3年連続だそうで、海の異変もいよいよ明確なものになってきているようです。
ロサンゼルス・タイムズの記事をご紹介します。
Sick sea lions wash ashore in California; rescuers brace for bad year
Los Angels Times 2015.01.03
病気のアシカがカリフォルニアに漂着し続けている。レスキューメンバーたちは今年が悪い年になると覚悟している
今年2015年は、カリフォルニアのアシカたちにとっては残酷な年となってしまうかもしれない。カリフォルニア州に座礁するアシカの数が、この3年の間、記録的な数に達しているのだ。
海岸に打ち上げられる、病気で、かつ親から棄てられた子どものアシカの数は、この1月に驚くべき数字を示した。
カリフォルニアのサウサリートにある海洋哺乳類センター獣医学局の責任者であるショーン・ジョンソン( Shawn Johnson )氏は以下のように述べる。
「アシカの子どもたちの成長が妨げられているのです。彼らは基本的には飢餓で死んでいます。彼らには、筋肉もなければ、脂肪もまったくない。骨と皮しかないのです」
しかし、トラブルの渦中にあるのは、子どもだけではない。
海洋哺乳類センターは、2015年1月全体で、すべて異なる年齢の 67頭の座礁したアシカを捕獲したという。通常の年なら、1月に座礁して救出れるアシカは、1頭から2頭だそうだ。
ショーン・ジョンソン氏は、「アシカ全体の数も大きな打撃を受けました。それは私たちにとって、大変にショックなことなのです」と言う。
サンペドロにある海洋哺乳類ケアセンターの所長は、「今年は、アシカのリハビリテーションにとって、非常に悪い年となりつつあるのです」と語る。
現在、海洋哺乳類ケアセンターには、異なる年齢層の 75頭のアシカが収容されている。
アシカの異常な死亡数の記録は、2013年1月にも記録されているが、今年のアシカの異常死亡数は、「その時の倍の数字」になっている。
2013年には、大規模な海洋生物の座礁に対し、アメリカ国立海洋漁業局は UME (異常死亡事象)を宣言した。
その際、科学者たちは 2013年の大量死は異常だと述べたが、ジョンソン氏は、
「しかし、それは昨年も起きて、そして、今年も起きているのです」
と言う。
海洋哺乳類センターは、1年間で平均 600頭の海洋動物を取り扱うが、現在は 1,030頭の海洋動物に対応している。ジョンソン氏は「大半を占めるのはもちろんアシカで、711頭に上ります」と語る。
座礁は多くが南カリフォルニアで起きているが、北カリフォルニアの例もある。
これは「非常に珍しい」ことだという。
通常だと、アシカたちは夏の終わりに北部へと移動し、冬には南カリフォルニアにアシカたちは向かう。なのに、今年の1月は、北カリフォルニアで多くの海洋生物を見ることにジョンソン氏たち専門家は懸念を持つ。
何が起きているのか?
この現象について、専門家たちはさまざまな説を考えている。
病気や環境が原因である可能性もある。
1991年以来、海洋生物の異常死亡事象は 60回起きている。
それらのうち、29のケースで原因が突き止められた。
それらのうちのいくつかは感染症だとされる。
しかし、1996年から、有害藻類の繁殖による生物毒素が多くの大量死事象の原因となっていると NOAA (アメリカ海洋大気庁)は述べる。
他の可能性として「アシカの生体数が移動能力のキャパシティを越えてしまった」ということを述べる専門家もいる。
カリフォルニアのアシカは、19世紀から 20世紀初頭に乱獲され、その数を減らしたが、1972年の海洋哺乳類保護法の制定は海洋生物の劇的な増加につながったとジョンソン氏は言う。
現在は生体数が豊富であり、30万頭がおり、毎年 5万頭増加するペースで増えていると推測されると NOAA の広報担当は述べている。
この大きなアシカの群れは、サポートできない可能性のある数だという。
カリフォルニアで異常死亡事象が3年連続で起きていることに対して、専門家たちはこの問題に真摯に取り組んでいる。