8月26日の羅先市の様子
・New Zealand News
日本でも九州などを中心に大きな被害を出した台風 15号(アジア名:コーニー / Goni )は、九州に接近する前に、フィリピンで 26人の死者を出すなど、今年の台風では最も大きな被害を出している台風のひとつですが、これが、8月26日頃、北朝鮮を直撃して、極めて深刻な被害が出ています。
特に、北朝鮮の特別経済区域である羅先(ラソン)市では、壊滅的な被害となっている光景が、北朝鮮の国営通信で公開されています。
朝鮮中央通信が公開した羅先市の様子
・YONHAP NEWS
朝鮮中央通信によれば、この洪水により、40名が死亡し、羅先市だけでも 1万1千人の住民と、484人の中国人観光客が避難している他、1000棟近くの住宅が全半壊しているそう。
・Play TV
・Globalfloods
洪水での被害と共に、強風によるものなのか、部分的に崩壊している高層住宅などの写真が多く見られます。
台風により崩壊したマンション
・RFA
・edaily.co.kr
世界気象機関( WMO )によれば、今回の台風で、北朝鮮の一部地域では、8月25日から 26日の 24時間で 300ミリメートル以上の猛烈な雨が降り続けたと見られているそうです。
まあ、北朝鮮は、6月まで「 100年に1度」とさえ言われたような同国史上最悪の干ばつに見舞われていたのですが、その後、一転して、豪雨などに見舞われることが多くなっていまして、今回の台風による農業被害も、おそらくは深刻なものだと思われます。
北朝鮮の深刻な干ばつについては、6月に記事にしたことがあります。
・北朝鮮で「過去100年で最悪の干ばつ」が進行・拡大していることが判明
2015年06月18日
このあたりを考えますと、今年の北朝鮮の収穫状況が良くなるとは考えにくく、今後の北朝鮮の食料事情はあまり良くない状況になることも予想されます。
北朝鮮は今でも十分に政情が不安定ですが、食料問題が深刻化すると、民衆の不満を逸らすための軍事力などで挑発が多くなりますし、いろいろと不安定要素にはなりそうです。
先日まで、北朝鮮は韓国を挑発していましたが、ロイターの「コラム:北朝鮮が韓国を挑発する本当の目的」という記事には、
北朝鮮で6月に起きた干ばつは、世界食糧計画(WFP)が推測していた以上に同国に打撃を与えただろう。北朝鮮は過去100年で最悪の干ばつだと表現していた。
さらに、北朝鮮政府がエボラ出血熱の水際対策として数カ月にわたって実施した国境閉鎖は、同国の観光業に深刻な打撃を与えた。観光業は小さいとはいえ、貴重な外貨獲得源だ。
こうしたことに加え、中国の習近平国家主席が北朝鮮の金正恩第1書記に冷たい態度を取ってきたことも、今回の暴発につながったとみていいだろう。資金と食料の不足に中国から愛想を尽かされたとの感情が重なれば、北朝鮮が挑発的行動に出ても驚くには値しない。
というようなことで、今回の台風により、農作事情の悪化が明らかになれば、政情の不安定さにもつながっていくものなのかもしれません。