2016年3月9日に「地球の記録」は、新しいサイト「地球の記録 - アース・カタストロフ・レビュー」に移転しました。今後ともよろしくお願いいたします。






2014年10月20日


米国のエボラ研究の第一人者が「エボラウイルスが突然変異によりさらに感染力を高めていること」を警告



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▲ 2014年10月13日の Vox より。


アメリカ国立感染症研究所( NIAID )のウイルス病原体部門のチーフ・サイエンティストであるピーター・ジャーリング( Peter Jahrling )という科学者が、米国メディア Vox とのインタビューの中で「エボラ・ウイルスが以前の株より感染能力を高めているという事実」について述べていることが報じられています。

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▲ ピーター・ジャーリング博士。NIAID より。


このピーター・ジャーリング博士という人は Vox の記事によると、地球上で最も危険なウイルスの数々の研究に人生を捧げている科学者のひとりで、エボラウイルスや、エボラと似たラッサウイルスなどの研究の第一人者なのだそう。1989年には、米国のバージニア州のレストンのサル検疫施設で新しいエボラの株であるレストン・エボラウイルス( Reston )を発見、分離しています。

そのエボラウイルスの研究でトップにいるジャーリング博士が、「エボラが以前より高い伝染性を持っている」ということに言及しています。

下は 1976年にはじめてエボラが報告されてからの、エボラ発生年の患者数です。2014年は飛び抜けて多いことに加えて、「今なお現在進行中である」ということがあります。

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Vox


今回は、ピーター・ジャーリング博士のインタビュー記事から抜粋してご紹介します。

なお、博士は、感染力が以前よりはるかに強くなっていることに関しては述べていますが、空気感染化していくことや、あるいは、エボラが世界的なパンデミックになっていくとは考えていないようです。



A top scientist worries that Ebola has mutated to become more contagious
Vox 2014.10.13


米国のトップ・サイエンティストは突然変異でエボラがより伝染性を獲得していることに懸念を示す


インタビュア:博士は、現在のエボラウイルスの循環については、どのような懸念をお持ちですか?

ジャーリング氏:今のウイルスが、より毒性の強い菌株であったとした場合、現在のエボラウイルスが過去のものと本質的に違っているかどうかを知りたいと思っています。私たちが試験で使用している現在のウイルスは、過去のものより感染率が高い気がするのです。もし、それが本当なら、これは過去のエボラとはまったく違った株だということになります。

インタビュア:多くの人びとがエボラが空気感染化するのではないかと心配していますが。

ジャーリング氏:感染に関しては、非常に明確に言えることは、患者と密接な接触を持った人たちが最も感染しやすいということです。つまり、治療や埋葬などでの感染です。しかし同時に、密接な接触だけでは説明できない発症例が存在していることも事実です。とはいえ、身体分泌物による血液中のウイルスの量の違いについて考慮する必要があります。

インタビュア:高ウイルス量は、現在のエボラウイルスがさらに速く拡散することを意味しますか?

ジャーリング氏:はい。私たちのモンロビア(リベリアの首都)での現地スタッフはウイルスの試験を行っていますが、現在のウイルスは、過去のものと比べて非常に速く広がり、ウイルス量も高いと伝えてきています。避難した患者との限られた研究では、彼らが血液や精液中でウイルスを発現させ続けていることも判明しています。これがどういうことなのか? 私たちにもまったくわからないのです。

インタビュア:空気感染化するという仮説をどう思われますか?

ジャーリング氏:ウイルスという存在は、いつでも突然変異して自己複製できます。なので、可能性としてならガス発生の性質を獲得する可能性はあります。

インタビュア:エボラが HIV (エイズ)のようなパンデミックを起こし、世界中に拡がるという懸念を持つ人たちもいます。そのようなことを言う人の中には、たとえば、 CDC (疾病管理予防センター)のトム・フリーデン( Tom Frieden )氏のような方もいます。ジャーリング博士のお考えはどうですか?

ジャーリング氏:エイズとエボラでは、輸送と感染経路が違います。エボラは急性感染症を引き起こします。そのため、たとえば死亡したり、あるいは治癒して免疫を獲得した場合は、その人はその後は長期間、エボラウイルスを運搬することはないのです。しかし、エイズはウイルスを持っている人自身がエイズに感染していることを知らずに多くの人に感染させます。長期的な視点から見れば、私にとっては、エボラよりもエイズのほうが脅威に感じます。感覚的には、エボラは人類の集団を焼き尽くそうとしているようです。

インタビュア:博士が今回のエボラの流行に楽観的なお考えをお持ちなのはどうしてですか?

ジャーリング氏:今回のエボラの流行では、動物、特にコウモリなどから人間への複数回のウイルスの伝送があったと考えられます。すべての感染がヒトからヒトへの伝送ではありませんでした。しかし、現在、これらのすべての菌株は違うものです。これが意味するところは、ウイルスがさらに突然変異しやすくなっているということです。なので、まだ私たちには何がどうなるかということは言えないのです。しかし、私個人の考えとしては、エボラが、(エイズのように)永久的に人間社会に根付く病気となっていくようには思いません。


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2014年10月16日


ウガンダで発生したエボラと似た種のマールブルグ熱がケニアに拡大した可能性



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▲ 2014年10月15日のケニアのメディア「スタンダード・デジタル・ニュース」の Scare in Bungoma as woman dies from marburg like symptoms (マールブルグ熱と似た症状で女性が死亡したことにより国境のブンゴマで懸念が高まる)より。


少し前の記事で、

ウガンダでエボラと似た病原体ウイルスによる「マールブルグ熱」が発生。1名が死亡。80名が隔離
 2014年10月07日

というものを記したことがあります。

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Outbreak News


このマールブルグ熱という感染症を起こすマールブルグ・ウイルスは、現在、猛威を奮っているエボラと非常に良く似たものです。

似ている点として、

・ウイルスの外見上の構造
・症状
・死亡率(最大 80 %)


などがあり、違う名称がつけられているというだけで、エボラとそれほど差はないもののように思えます。

違う点としては「エボラのような大規模感染を起こさない」ということが挙げられていますが、マールブルグ熱 - Wikipediaで、過去のマールブルグ熱の状況を見てみますと、

・ 1998 - 2000年:コンゴ民主共和国 154人感染、128人死亡
・ 2004 - 2005年:アンゴラのウィジェ州 277人死亡


などの大きな流行も起こしていて、決して小さな流行を起こすだけではないウイルスである可能性もあるかもしれません。

10月のはじめ、ウガンダでこのマールブルグ熱により死者が出て以降、特に報道はなかったのですが、冒頭のように、ウガンダの隣国のケニアでマールブルグ熱のような症状で死亡した女性の症例が出て以来、緊張が高まっているようです。

位置関係については下のようになります。

アフリカのエボラ最大感染地域と、ウガンダ、ケニアの場所

africa-map-1.gif


ウガンダとケニアの国境付近

Bungoma-map.gif
Bungoma Project


冒頭のケニアの報道のタイトルにあるケニアのブンゴマ( Bungoma )という町がウガンダからの入国ポイントであるのですが、報道では下の通りの状況です。

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Standard Digital News


国境とはいっても、人々は自由にお互いの国を出入りしているようなのです。

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▲ ブンゴマの町並み。West fm より。


記事によれば、このブンゴマという町は、20世紀の初頭から貿易の拠点として栄えた場所で、ウガンダとケニアの交流の歴史ともいえる町のようで、それだけに、人的な交流を止めるというようなことは容易ではないようです。

今回のマールブルグ熱が散発的な流行で終わるなら問題ないですけれど、現在のエボラの大流行にしても、最初はこのような「小さな流行」から始まりました

状況が急速に悪化したのは流行の発生から半年以上経ってからのことです。

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2014年10月12日


過去 1500 年間の感染症の流行とパンデミックの歴史(2)



前記事の、

過去 1500 年間の感染症の流行とパンデミックの歴史(1)

の続きです。

541年のペストの世界的流行から、2014年のエボラの大流行までの世界の大規模感染症の流行とパンデミックの歴史」の分布図です。インタラクティブ・マップは、デイリーメールの記事、

The world's deadliest outbreaks: Interactive map shows the human cost of flu, bubonic plague and Ebola globally since 541
(世界最悪の流行の数々:インタラクティブ・マップは、541年以来の世界的なインフルエンザや腺ペスト、エボラの人的な犠牲を示す )

にあります。



1918年から 1923年まで続いたインフルエンザ(スペインかぜ)のパンデミック

1918-spanish-flu.gif


スペインかぜの死亡者数は、当時、第一次世界大戦と重なったこともあり、正確な死者数はまったくわかっていませんが、長崎大学名誉教授の松本慶蔵さんの文書では、2,000万人以上とあり、Wikipedia では、4,000万人 〜 5,000万人となっています。

仮に、5,000万人以上が死亡したという推定から見ると、下のグラフのように、このインフルエンザの流行が、歴史的惨事だったことがわかると思います。

spanish-pandemic.gif
20世紀のパンデミック


世界全体での死者数は明確ではありませんが、日本については正確な記録が残されています。

松本名誉教授の文章によれば、

日本では、1918年(大正 7年)の 11月に全国的な流行となった。1921年 7月までの3年間で、人口の約半数( 2,380万人)が罹患し、38万 8,727人が死亡したと報告されている。

とあります。

死亡者数も多いですが、

当時の日本の2人に1人が感染した

という非常に強力な感染力を持ったインフルエンザだったようです。

現在、多くの科学者たちが恐れているのことこそが、このスペインかぜの時のような鳥インフルエンザのパンデミックの発生だと思います。



1957年から 1958年まで続いたアジアかぜ

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これは、アジアかぜ - Wikipedia によりますと、

アジアかぜは、1956年に中国南西部で発生して翌年から世界的に流行したインフルエンザ。ウイルスはA型のH2N2亜型である。死者はスペインかぜの1/10以下であったが、抗生物質の普及以降としては重大級の流行であった。

というもので、死者数は、スペインかぜの 10分の 1とはいえ、

世界:約100万人以上が死亡。
日本:1957年5月から始まり、およそ300万人が罹患し、死者5,700人。

という大災害でした。



2002年から 2003年の SARS (重症急性呼吸器症候群)の流行

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SARS は、2002年 11月に中国の広東省で発生し、2003年 7月に新型肺炎制圧宣言が出されるまでの間に 8,069人が感染し、775人が死亡したものです。

下が患者数が多かった国の感染者数と死亡者数です。

sars-case.gif
Wikipedia


日本は中国と隣接しているにも関わらず、SARS の感染者はありませんでした。



2009年から 2010年の豚インフルエンザのパンデミック

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これは記憶に新しいですね。

「A型H1N1亜型インフルエンザ」という型のインフルエンザが世界的に流行したもので、WHO がパンデミック宣言を出したものです。一般的には「豚インフルエンザ」と呼ばれていました。

WHO によるパンデミック宣言が出されたものの、結果的には、死者数は下のようなことになり、「毎年の季節性インフルエンザより死者数が少ない」というパンデミックとなりました。

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Wikipedia


ちなみに、毎年の季節性インフルエンザの全世界での死者は、厚生労働省のウェブサイトによりますと、

直接的及び間接的にインフルエンザの流行によって生じた死亡を推計する超過死亡概念というものがあり、この推計によりインフルエンザによる年間死亡者数は、世界で約25〜50万人、日本で約1万人と推計されています。

とあり、季節性インフルエンザだけでも、毎年数十万人が亡くなっていることを知ります。

そして、この 2009年のインフルエンザの次に「世界的流行が懸念される」というようになってきているのが、現在のエボラ出血熱です。


エボラに最近の状況に関しては、 In Deep の、

スペイン、イギリス、フランス、チェコ、ブラジル……。全世界で続発するエボラ疑い患者。そして「モンスターエボラ」誕生の可能性
 2014年10月12日

という記事に記しましたので、ご参考いただけると幸いです。

今後エボラがどのようになっていくのかは、今は予測さえできない状態です。

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2014年10月11日


過去 1500 年間の感染症の流行とパンデミックの歴史(1)



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▲ 1346年から 1350年まで続いたペストのパンデミックの感染国。青で示された部分です。2014年10月10日のデイリーメール より。


エボラ出血熱での死者が 10月 10日の WHO の発表で、4000人を突破したことが報じられています。

エボラ熱、死者4000人超え 先進国にも不安広がる
日本経済新聞 2014.10.11

世界保健機関(WHO)は10日、西アフリカで感染が拡大しているエボラ出血熱の死者が8日までの集計で4033人にのぼったと発表した。特にリベリアで増加に歯止めがかからず、全体では1カ月強で倍増した。感染者数は疑いのある人も含め8399人。米国やスペインでも感染者や死者が出たのを受け、先進国にも不安が広がっている。

上の記事で、「増加に歯止めがかからず」と記されているリベリアでは、現在、WHO の集計の数の冒頭に「」という不等号の記号が付記されています。

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Ebola virus epidemic in West Africa


これは、たとえば、10月 10日の時点で、リベリアのエボラでの死亡者は「 2316人」となっていますが、数字の前に「≥」がつくことによって、この数字を含めて、これ以上というような意味になると思われ、患者数の正確な把握ができなくなってきている状況が伺えます。

エボラのことは、今いろいろな国でいろいろなことが起き始めていて、それらを調べているところですが、このような時期に英国デイリーメールが興味深い図を掲載していました。

それは「541年のペストの世界的流行から、2014年のエボラの大流行までの世界の大規模感染症の流行とパンデミックの歴史」の分布図です。

冒頭に載せた図もその中のひとつです。
こういうものを、まとめて見たことがなかったですので、興味深かったです。

その中から全部は無理ですが、いくつかを2回にわけて掲載したいと思います。

すべて見たい方は、 デイリーメールの、

The world's deadliest outbreaks: Interactive map shows the human cost of flu, bubonic plague and Ebola globally since 541
(世界最悪の流行の数々:インタラクティブ・マップは、541年以来の世界的なインフルエンザや腺ペスト、エボラの人的な犠牲を示す )

をご覧下さい。

それでは、ここからです。



541年から 542年に発生した腺ペストのパンデミック

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この 541年のペストの大流行に関しては、 In Deep の

西暦 541年の東ローマ帝国でのペスト襲来に関してのヨーアンネースの記録
 2012年09月20日

という記事に、当時の東ローマ帝国で聖人伝を記す人物として名高いヨーアンネースという人が、詳細な記録を残していて、そのことについて記しています。

詳しくは上の記事をお読みいただければ幸いですが、東ローマ帝国の首都コンスタンティノープル(現在のトルコの都市イスタンブール)の 541年の状況は、

天罰がこの都に重くのしかかった。まず襲われたのは路上に横たわっていた貧者たちだった。一日のうちにこの世を去っていった人数は、五千人から七千人、さらには一万二千人、そして、ついには一万六千人にのぼった。

だがこれはまだほんの序の口だった。役人たちは各港や十字路、そして市門の入口に立って、死人の数を数えていた。コンスタンティノープル市民で生き残っている人はごく少数になった。

死者数は確かに数え上げられていたが、路上から運び去られた遺体が三十万を上回ったことは間違いない。役人は二十三万人まで数えたところで足し算を止めてしまい、それ以降はもう『大勢だ』と言うだけになった。こうして、その後の遺体は、数えられることもなく持ち去られたのである。

というようなものだったようです。

「途中で犠牲者のカウントをやめてしまう」というあたりは、現在のリベリアとも似たような部分も感じないではありません。



1816年から 1826年まで続いた最初のコレラのパンデミック

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このコレラのパンデミックは、上の地図を見ると、日本も含まれていますね。

ちなみに、このパンデミックが始まった 1816年というのは、「夏のない年」と言われた冷夏で、夏のない年 - Wikipedia によりますと、

夏のない年は、北ヨーロッパ、アメリカ合衆国北東部およびカナダ東部において夏の異常気象(冷夏)により農作物が壊滅的な被害を受けた1816年を指す。

という年で、その他にも、

清(中国)においては特に北部で、寒さのために木々が枯れ、稲作や水牛も被害を受けた。残りの多くの農作物についても洪水によって壊滅した。

とあり、また、インドなどでも、

ムガル帝国(インド)においては、夏の季節風の遅れにより季節外れの激しい雨に見舞われ、コレラが蔓延した。

という夏でした。

コレラは次に、1829年から 1851年まで世界的なパンデミックを起こします。その時には、上の1回目の時には流行しなかった北アメリカの全域でもコレラが蔓延します。



1889年から 1890年まで続いた鳥インフルエンザのパンデミック

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これは、世界をめぐるインフルエンザという記事によりますと、

1889〜90年の「ロシアかぜ」は、トルキスタンにまず現れ、ヨーロッパ全域に拡大して20〜25万人が死亡した。世紀の変わり目の18世紀末から19世紀にかけて、ヨーロッパ全土でニワトリや七面鳥などの家禽の大量死が発生、養鶏業に大きな被害を与えた。

当時、中世のペストになぞらえて「家禽ペスト」と呼ばれていた。これがきたるべきインフルエンザ・パンデミックの先駆けになった。

というもので、どうやら記録が残る歴史の上では、「インフルエンザの最初のパンデミック」だったようです。

この続きは、次回の記事に記します。

そこには、上の「ロシア風邪」とよばれた 1889年のパンデミックがさらに強大となって人類を襲った鳥インフルエンザのパンデミックである 1918年のスペイン風邪も含まれます。

スペイン風邪は、過去 100年の人類史の大量死の中でも際だった死者(推定死者数は、4000万 〜 6000万人)を出した出来事でした。

そして、このようなリスクは人類にはいつもふりかかる可能性があります。たとえば、エボラも現状では、前回記事の、

もしエボラが米国に蔓延した場合、治療費は? 米国ダラスで死亡したエボラ患者の治療費は「1時間に約 10万円」で、総額では5千万円を越えていた
 2014年10月09日

にあるような大層な治療法しか存在しないとすれば、蔓延してしまった場合、病院の治療というのは現状ではあまり現実的ではなく、むしろ自己回復力に望みを託す他ないという部分もありそうです。

報道では、しばしば「エボラに効果がある薬やワクチン」の話題が出ては消えていきますけれど、治療薬の開発がどのようになっているのかの現状もわかりません。

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2014年10月09日


もしエボラが米国に蔓延した場合、治療費は? 米国ダラスで死亡したエボラ患者の治療費は「1時間に約 10万円」で、総額では5千万円を越えていた



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Extinction Protocol


アメリカ初のエボラ患者となったリベリア籍の男性、トーマス・エリック・ダンカンさんが、10月 8日に死亡しました。

下はブルームバーグの記事です。

米国初のエボラ熱患者トーマス・エリック・ダンカンさん死亡
ブルームバーグ 2014.10.08

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・トーマス・エリック・ダンカンさん

米国内で初のエボラ出血熱患者と診断されたトーマス・エリック・ダンカンさんが8日、死亡した。ダンカンさんはテキサス州ダラスの病院で隔離され、治療を受けていた。

リベリア人のダンカンさんは祖国で感染した後に、恋人のルイーズ・トローさんと結婚するために渡米。9月30日にエボラ出血熱と診断された。トローさんも現在は隔離されているが、今のところ症状はみられない。


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▲ 米国で初のエボラ出血熱の発症者となったトーマス・エリック・ダンカンさんが治療を受けていたダラスのテキサス・ヘルス・プレスビテリアン病院。


さて、その問題とは別に、冒頭にある「別の問題」が出てきています。

医療費の高額さは世界でも最高クラスのアメリカではあるわけですが、10月 7日の米国シカゴ・トリビューン紙は、ダンカンさんに対してのエボラの治療費が 5000万ドル(約 5300万円)に達している可能性を報じています。

ダンカンさんがダラスの病院に入院したのが 9月 28日(エボラと診断が確定したのは 9月 30日)ですから、報道のあった 10月 7日までの、約 10日間で、日本円で 5000万円以上の治療費がつぎ込まれたのでした。

そして、結局、ダンカンさんは亡くなっていますが、仮に亡くならなかったとしても、健康保険もなく、支払い能力もありませんでした。

このような費用は、アメリカにおいて仮にエボラに他の人が感染した場合は、ダンカンさんだけではなく、多くの人が払うことができないわけで、今回だけの問題ではなく、今後のことを考えると、非常に大きな問題にもなりうる話かもしれません。

シカゴ・トリビューン紙の記事の概要をご紹介します。

なお、この記事の時点では、患者のトーマス・エリック・ダンカンさんは死亡していません。



Hospital bill for Ebola grows at $1,000 an hour in Dallas case
Chicago Tribune 2014.10.07


ダラスの場合、エボラの治療の費用は1時間に 1,000ドル(11万円)かかっている


ダラスの病院でエボラの治療を受けているトーマス・エリック・ダンカンさんに対してのこれまでの治療費が、総額で最大 50万ドル(約 5300万円)に達している可能性がある。

ダンカンさんは、深刻な容体になった 9月 28日以来、ダラスのテキサス・ヘルス・プレスビテリアン病院( Texas Health Presbyterian Hospital Dallas )で、隔離治療を受けている。

人工呼吸器をつけ、試験的な薬を投与されている他、腎臓透析を受けている。

また、治療には流体交換、輸血、そして、血圧を維持する薬が使われる。さらに、エボラに汚染された廃棄物の処理の費用や、看護師を保護するための機器のセキュリティ費用もかかる。

こうしたことから、ワシントンにある保健コンサルティング会社の最高経営責任者のダン・メンデルセン( Dan Mendelson )氏は、ダンカンさんの治療には、おそらく、1日に 18,000ドル(約 190万円)から 24,000ドル(約 250万円)以上の費用がかかっているだろうと述べた。

ダンカンさんは、これまで9日間、隔離入院しているが、観光ビザでリベリアからアメリカにやって来ており、いかなる健康保健も所持していない。つまり、病院側は、ダンカンさんが明らかに治療の費用を持っていないことを認識しているとした場合、完全な「チャリティ治療」となっているという指摘がある。

ワシントンのリベリア大使館のスポークスマンは、ダンカンさんの治療費の支払いに関しての議論を避けた。

「請求書の問題を決定するのは時期尚早だ。ダンカン氏は危険な状態にあり、何よりも、まず氏の健康を回復することが問題だ」と、リベリア大使館のスポークスマンは言った。

ダンカンさんは、アメリカ国内での初のエボラ患者だが、それ以前に、アフリカで発症した後にアメリカで治療を受けたエボラ患者が3人いる。また、オマハとアトランタでも1人ずつ治療を受けた。

どの病院も治療費に関してのコメントは出していない。

最初に米国でエボラの治療を受けたのは、リベリアで現地での治療にあたっていたケント・ブラントリー( Kent Brantly )医師だったが、彼の場合は、彼が所属しているキリスト教系の慈善団体「サマリタンズパース」( Samaritan's Purse )が提供する健康保険で治療費がカバーされた。

他の米国で治療を受けたエボラ患者も、所属する団体の健康保険と労災保険で費用が適用され、一部費用が免責されている。

隔離病棟での集中治療室の費用は、標準の治療の倍のコストが派生する。

したがって、もし仮に、米国で、隔離病棟を使用して治療しなければならないような感染症の大規模な流行が発生した場合の懸念は残る。しかし、病院が経験を積むにつれて、コストは下がるだろうと述べる専門家もいる。

これまで一部のエボラ患者に試験的な薬物療法を試みたが、現在、エボラに対して承認された治療法は存在しない。体液を維持し、血液を交換する対症療法が行われる。




(訳者注) ここまでですが、もし仮に、アメリカ国内でエボラが多少でも感染拡大した場合、この「費用」というのは大きな問題となりそうです。

普通に考えれば、「保健に入っていない人びとはエボラになっても治療を受けられない」ということにもなるでしょうし、かといって、病院がすべての患者を引き受けると、病院側が破産してしまいかねなく、しかし、エボラ患者をそのまま放置しておくと、さらに感染拡大の危険性が広まる可能性が高まるわけですし、悩ましい問題です。

そのような場合は、リベリアがおこなっているような、軍による強制隔離とか、あるいは、シェラレオネがおこなったような「事実上の戒厳令」の下に何日間か置かれるということになる可能性はないとはいえません。

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2014年10月07日


ウガンダでエボラと似た病原体ウイルスによる「マールブルグ熱」が発生。1名が死亡。80名が隔離



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▲ 2014年10月5日の Outbreak News より。


西アフリカでのエボラの感染拡大は、さらに急ピッチになっていて、シェラレオネでは、「エボラによって、1日に 121 人の死者を記録」というような急速な状況の悪化ぶりが露呈しています。

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▲ 2014年10月5日のロイター Sierra Leone records 121 Ebola deaths in a single day より。


最大の流行地でもあるリベリアに至っては、治療体制や状況把握システムそのものが機能していないようで、「国家崩壊の危機」という表現も出始めている感じです。

そんな中、西アフリカから遠く離れたウガンダで「マールブルグ・ウイルス」という、エボラとよく似たウイルスによる感染が発生、1名が死亡、現在、80人が隔離されて監視下にあるという報道がありました。

エボラの流行している西アフリカ3カ国(ギニア、シェラレオネ、リベリア)とウガンダの位置関係は下のようになります。

africa-map-1.gif


マールブルグ熱という病気の名は、今回初めて聞いたのですが、 Wikipedia によりますと、以下のような病気です。

マールブルグ熱とはフィロウイルス科のマールブルグウイルスを原因とする人獣共通感染症。

エボラウイルスもフィロウイルス科。マールブルグウイルスは、エボラウイルスと電子顕微鏡上の外見は非常に似ている。野生動物のサル、コウモリ、鳥類からの空気感染、飛沫感染は否定できないが確認もされていない。

1967年、西ドイツのマールブルクとフランクフルト、ユーゴスラビアのベオグラードにポリオワクチン製造・実験用としてウガンダから輸入されたアフリカミドリザルにかかわった研究職員や清掃員など25名が突如発熱、うち7名が死亡するという事件が発生した。

原因はマールブルグウイルスというこれまでに知られていないウイルスによる出血性感染症であった。

その後も中央アフリカで散発的な発生が見られているが、エボラ出血熱ほど急激に感染を拡大するウイルスではないようだ。しかし、2005年4月にアンゴラで大量に感染者が続出し300名前後が死亡したため「散発的な感染しかない」という点について疑問が出てきている。

このような病気で、エボラと大変よく似ている上に、上の記述にありますように、

> 「散発的な感染しかない」という点について疑問が出てきている。

ということもあり、今回のマールブルグ熱が、2005年のアンゴラのような大流行となってしまうのかどうかに懸念が集まっています。

また、死亡率も最大 80%に及ぶ病気で、「エボラと違うのは名称だけ」という感じの病気のようです。

思えば、現在の西アフリカのエボラも、今年夏前までは、ここまで感染が拡大するとは、ほとんどの医療関係者は考えていなかったはずです。しかし現実は、このように想像を絶する大流行となってしまっている。

最近の世界のいろいろな「病気」の状況を考えますと、

今は感染症が拡大しやすい時期なのかもしれない

というように考える他はないようにも思います。

過去最悪レベルの流行に見舞われているマレーシアのデング熱も、患者数は減る気配を見せていません。

マレーシアでデング熱猛威、年初来患者7万人
newsclip 2014.10.05

マレーシアでデング熱が例年を上回る流行を見せており、年初来の死者数は9月末までに149人、患者数は7万7527人を数え、死者数、患者数ともに昨年の3倍を超えている。

スブラマニアム保健相は「過去最悪の流行だ」として注意を呼び掛けた。

また、アメリカでは、過去記事」アメリカ中西部の子どもに広がる「過去最悪」のエンテロウイルス(EV-D68)感染症の異常事態で書きましたように、「重症化するエンテロウイルス」が子どもたちの間で大流行しています。

このように、通常では考えられないほど、世界中で感染症が流行しやすくなっている理由のひとつとして、 In Deep の、

世界中で蔓延する「謎の病気」の裏に見える太陽活動と白血球の関係
 2014年05月04日

という記事の中で、

「太陽活動と白血球の数の増減の関係」

について書いていますので、ご参考いただければ幸いです。

しかし、ここでは、そのことは置いておきまして、ウガンダのマールブルグ熱について、ロイターの記事から抜粋します。

仮にウガンダのマールブルグ熱が、現在のエボラのように感染拡大していくようなことがありますと、アフリカの広範囲へのダメージがさらに深刻になるかもしれません。

なお、記事には都市名が記されていませんが、隔離されている人たちがいる病院は、ウガンダのメンゴ( Mengo )という市内にある病院です。



ウガンダでマールブルグ熱、1人死亡80人隔離 エボラ熱と同症状
ロイター 2014.10.05

ウガンダ保健当局は、エボラ出血熱と同様な症状を引き起こす致死率の高いマールブルグ出血熱で男性が死亡したと発表した。

死亡した男性と接触のあった80人が隔離され、このうち、男性の兄弟にマールブルグ出血熱の症状が出ているという。

マールブルグ出血熱は、エボラ出血熱と同じ科のウィルスが引き起こす。エボラ出血熱と同じく、感染者の唾液や血液など体液に接触したり、サルなど感染した野生動物に触れたりすると感染する。

14日の潜伏期間の後、激しい頭痛に続いて出血の症状が表れ、9日以内に80%以上の確率で死に至る。ワクチンや有効な治療法は存在しない。

当局によると、死亡したのは医療施設に勤務する30歳の放射線技師。9月28日に死亡する10日ほど前から体調が悪くなり、頭痛や腹痛、吐血、下痢などの症状を訴えていた。

隔離された80人のうち、60人が医療関係従事者。

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2014年10月05日


中国の甘粛省でペスト発生。1人が死亡、150人以上が隔離



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▲ 2014年10月4日の guangyuanol より。


中国甘粛省の酒泉市という場所でペストが発生。1名が死亡し、151人が隔離されたという報道がありました。

この酒泉市というのは Wikipedia によりますと、

北は内モンゴル自治区のエチナ旗と隣接し、モンゴル国との国境を有する。

というモンゴルとの国境沿いにある場所のようです。

甘粛省酒泉市

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今回のペストで死亡した人は、 PTI などの報道によりますと、酒泉市の牧場で羊を放牧している 45歳の男性で、この牧場の周辺では最近、マーモットの間にペストが蔓延していることが知られていました。

この「マーモット」というのは、リス科の生き物で、下のような大型のげっ歯類です。

Marmot.jpg


中国では、以前から、このマーモットを介してのペストの発生が起きていて、今年も今回のペスト発生による死者はこれが初めてではなく、2人目とのこと。

2010年にも、同じ甘粛省で、マーモットを食べた人がペストを発症して死亡するということがありました。

これは、

中国でペスト発生:甘粛省の男性がマーモットを捕食し、ペストに感染して死亡
 In Deep 2010年06月16日

という記事に報道を翻訳ものを記したことがあります。

中国の公衆衛生法では、ペストは感染症として最も重大な感染症のクラスに指定されているもので、死亡者と接触のあった人たちは隔離して経過観察される他、死亡者の住む地域は徹底的に消毒されます。

ペストに関しては、今年は、アメリカでもペスト菌を持つノミや、げっ歯類(リスやネズミなど)が相次いで発見されています。

下は 2014年 9月 30日のアメリカ 13WMAZ の報道のタイトルです。

Fleas in Arizona test positive for the plague
 (アリゾナで、ノミがペストに陽性反応)


中国もアメリカも、自然界には、わりと常にペストが存在するようなのですが、人の住む地域と隣接しているところにすむ生物たちが保菌していて、今回の中国のように感染して死亡者が出ることもあります。

古い資料ですが、下は 1970年 - 1998年までの全世界のペストの危険性を示した地図です。

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国立感染症研究所


ただし、ペストには抗生剤が非常に効果があり、早く治療を開始すれば昔ほど恐ろしい病気ではありません。

ただ、問題なのは、最近、「世界中で抗生物質の効かない耐性菌が拡がっている」ということです。

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▲ 2014年5月1日の NHK の報道「WHO 耐性菌感染 世界で広がっている」のスクリーンショットより。記事は、 In Deep 「「数千万人の死」という言葉に違和感を感じないアメリカという国のイメージ。そして、戦争や耐性菌の蔓延にさえ思う「犠牲」というキーワード」にあります。


いろいろとと複合して出現した場合、現代の医学ではすでに恐くない病気となっている、ペストを含めた様々な病気が「再び大変に恐ろしいものになる」という可能性も常にあると思われます。

冒頭に貼りました中国のメディアのタイトルの「甘粛省で発生したペストを過小評価すべきではない」という表現は、ある意味では正しいのかもしれません。

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2014年10月01日


シエラレオネのエボラ出血熱での死亡者が公式統計より「約 1,000人多い」可能性



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▲ 2014年9月30日の Breitbart より。


エボラ出血熱の患者数は、2014年 9月 23日の時点で、5カ国で 6574人となり、死者の総数は WHO の発表で 3091人となっています。

9月25日にはアメリカ国内でも感染者が出ましたので、現在、エボラ出血熱が発生した国は6カ国(ギニア、リベリア、シエラレオネ、ナイジェリア、セネガル、アメリカ)となります。

その中でも、リベリアとシエラレオネの患者数が多いわけですが、そのうちのシエラレオネにおいて、「政府の統計がおかしい」ことについて地元のメディアが報じています。

シエラレオネでのエボラ感染者数と死亡者の数は、9月 25日までに、

感染 2120人
死亡 561人

となっています。

細かい日々の数値の変動はともかくとして、現状で、

「大体 2000人ほどの患者がいて、そのうち、500人以上が死亡している」

ということになっているわけですが、シエラレオネの地元メディアの Awareness Times は下のような図を入れた報道をしました。

awareness-times.jpg
Awareness Times


これを日本語にいたしますと、下のような感じとなります。

a-times.gif


つまり、現在、 WHO の公式発表にもなっているシエラレオネ政府の統計の、

感染 2120人
死亡 561人


の「死亡者」の数自体が、確認された生存者の数から考えるとおかしいということを述べています。

2120人の患者のうち、「 432人の生存者を確認した」ということ以外は、他の患者の所在は確認されていないということになるようで、上の地元メディアでは、その答えとして「ほとんどすでに死亡したか埋葬されたのだろう」というような意味のことが示されていますが、他にも、何人かは逃走したのではないか、というような憶測もあります。

仮に、シエラレオネの地元メディアが述べるように「約 1,000人の説明できない患者がすでに亡くなっているとした場合」には、シエラレオネのエボラ患者についての統計は、大体、下のようになります。


感染 2120人

死亡 1688人


確かに、シエラレオネの現在の統計の致死率が、あまりにも低いという部分はあります。最大致死率 90%でもあるエボラですが、シエラレオネの現在の正式統計では4割に満たない比率となっています。

もっとも、このことに関して、シエラレオネの統計には「信用性がない」と、欧米の外交官が明確に公言していることが、9月25日の米国ニューヨーク・タイムズの記事に載せられていたりしていて、各国の統計の数が「公式」というほど正確なものだとは、欧米諸国はもともと考えていないようです。

こうなってくると、WHO の統計発表も、「とりあえず発表している」という部分がさらに強くなってきている感じもしないではありません。

今となっては、特に、リベリアとシエラレオネでは、実際の患者数も死者数も、正確な数値とは程遠いものとなっている可能性が高く、治療に関しても統計に関しても、「コントロールできない状況」がさらに強まっているようです。

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2014年09月28日


アメリカの子どもたちを襲う重大な呼吸疾患の病気の感染地域が「全米 38 州」に拡大



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Extinction Protocol



今月のはじめ、

アメリカ中西部の子どもに広がる「過去最悪」のエンテロウイルス(EV-D68)感染症の異常事態
 2014年09月08日

という記事を書きまして、アメリカ中西部の子どもたちの間に、エンテロウイルス EV-D68 による呼吸器系の深刻な症状を伴う病気が流行していることを記しました。

その時の時点で、エンテロウイルス EV-D68 の症例の発生が確認されていた州は、

・コロラド州
・ノースカロライナ州
・ジョージア州
・オハイオ州
・アイオワ州
・イリノイ州
・ミズーリ州
・カンザス州
・オクラホマ州
・ケンタッキー州


の 10州だったのですが、9月 25日のニューヨークタイムズの記事では「全米 38州」に拡大していることが報じられています。

多くの子ども病院の緊急治療室が埋まってしまうような状態になっているようで、しかし、本来、軽い風邪のような症状しか起こさないエンテロウイルスが、なぜ、これほどまでに子どもたちの重い症状を引き起こしているのか、今のところその理由はわからないそうです。

とにかく今は病気の多い時代ですので、海外で起きている病気だといって安心できない面もあります。

なぜなら、エンテロウイルス自体は、どこにでもある、ありふれたもので、それがアメリカではこのように凶暴なウイルスとなってしまっているわけですから、どこの国でも可能性はあるのかもしれません。

そのニューヨークタイムズの記事からご紹介します。



Outbreak of a Respiratory Illness Escalates Among Children and Mystifies Scientists
NY Times 2014.09.25

子どもたちの呼吸器疾患の流行は感染が拡大。科学者たちは困惑している

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最初にアメリカ中西部で発生が確認された呼吸器疾患は、現在、全米 38州に拡大しており、次々と子どもたちが病院に搬送されている。そして、ウイルスの復活性についての謎を解明しようとしている科学者たちを困惑させている。

9月 25日時点で、アメリカ疾病管理予防センター( CDC )は、エンテロウイルス EV-D68 の感染者が 226人に達していることを確認した。

カンザスシティにあるマーシー小児科病院の感染症局長、メアリー・アン・ジャクソン( Mary Anne Jackson )医師は、「 CDC の報告数は、明らかに氷山の一角に過ぎません」と語る。この病院は、先月、子どもの呼吸困難や呼吸器疾患の急増に対して、最初に警告を発令した小児科だ。

シカゴのメディスン・カマー小児科病院では、緊急治療室が搬送された子どもたちで満員になり、新たな子どもの急患を受け付けることができず、救急車で運ばれてきた子どもたちを他の病院へと転送したことが、先月3度もあった。

メディスン・カマー小児科病院のダニエル・ジョンソン( Daniel Johnson )医師は「過去10年で、救急車で運ばれてきた急患を他の病院に転送したことは1度もありません」と語る。

エンテロウイルスそのものはごくありふれたウイルスだが、現在流行しているエンテロウイルスは、それらのありふれた株とは違うものだ。

その症状は、体の痛みや咳などの重い風邪と似ている。しかし、中には呼吸困難などにいたるまで症状が重く進行する子どもたちがいるのだ。

そして、科学者たちは、このような事態が起こっている理由がわからないという。

コロンビア大学でウイルスを研究しているラファル・トカルツ( Rafal Tokarz )准研究員は、「なぜ、このウイルスが重篤な症状を引き起こしているのか、多くの子どもの親御さんたちはお知りになりたいと思ってらっしゃると思いますが、しかし、私にも今のところわからないのです。さらに研究を続けないと、何の答えもないのが現実です」と述べる。

コロラド州立小児科病院では、8月 18日から 9月 24日の間に、およそ 3,600人の子どもたちが緊急搬送され、かつ緊急の医療施設で治療をした。

ほとんどが自宅に戻っているが、子どもたちは継続的な呼吸治療と酸素補給を必要とする。さらには、その中の 10パーセントの子どもたちは集中治療ユニットでの人工呼吸器の治療が必要なため入院した。

専門家は、子どもたちが風邪のような症状を呈しても、軽度の呼吸器症状なら、緊急病院に連れていく必要はなく、自宅で安静にして過ごしているのがよいというが、しかし、呼吸困難の徴候や、あるいは胸の痛みや、ぜんそくのような発作が見られたら、ただちに医療機関で診断してもらうべきだと述べている。

発熱は関係なく、呼吸系の異常に注意を払ってほしいという。

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2014年09月20日


南米ベネズエラでエボラの症状と似た「謎の出血熱」が発生し、 10名が死亡。しかし、政府は病気の存在そのものを否定



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▲ 2014年9月17日の Local10 より。


南米ベネズエラで「謎の病気」が流行しています。その病気により、すでに 10名の方が亡くなっているのにも関わらず、いまだに病気の正体は特定されていません。

venezuela-map.gif

▲ ベネズエラの位置。


ちなみに、冒頭の記事の男性は、ベネズエラの首都マラカイのあるアラグア州の知事で、これは記者会見に出席している様子ですが、知事が手にしている「写真」は今回の病気の写真ではない「とされている」ものです。

どういうことかというと、ベネズエラでは現在、この病気の「存在」をめぐり、医師と政府が対立しているようなのです。

ベネズエラの医師たちは、今回の病気は大変に危険なものかもしれないと、政府に警告を出すよう求めていましたが、ベネズエラ政府は「そういう病気そのものの存在を否定する」というような態度であるようなのです。

つまり、上の写真もその一貫のようで、「こういう写真がインターネットのソーシャルネットワークを通じて出回り、市民の恐怖心を煽っている」として、知事は憤怒を表明していますが、ベネズエラ医療連盟がすでに病気で 10名の方が亡くなっていることを表明しているわけですから、病気そのものが存在していることは事実だと思われます。

ベネズエラ政府が、なぜこれほどまでに病気の存在を否定したいと思うのかということ自体がわかりませんが、その問題はともかくとして、問題はその「症状」です。

報道でその病気の症状を読んでみると、

「エボラ出血熱と共通している部分」

を感じてしまいます。

報道に書かれている症状を書きますと、初期症状として、

・発熱
・発疹


などがあった後、

・皮膚に大きな水ぶくれができる
・外部の出血
・体内での出血


という症状が出て、その後、重症化すると、

・肝不全
・腎不全
・呼吸不全


という状態となっていくという、かなり厳しい症状を見せる病気のようです。

患者は、各地からベネズエラの首都マラカイにある、多分、ベネズエラで最大規模の施設を持つと思われるマラカイ中央病院へと搬送されているようです。

Maracay-hospital.jpg

▲ マラカイ中央病院( Hospital Central de Maracay )。


そのうち病気の正体はある程度わかってくると思いますけれど、もし、これが「西アフリカのエボラとは関係のない感染症」もだとすると、症状がエボラと似ているだけにむしろ恐ろしい感じがします。

つまり、現在、同じような出血熱が世界中に出現しているのかもしれないという意味での恐ろしさです。

冒頭に貼りました記事をご紹介いたします。




Venezuela on alert over mysterious, deadly disease
Local10 2014.09.17

ベネズエラで謎の致死性の病気に対して警報を発令

首都カラカスを含むベネズエラのいくつかの都市で、謎の病気によって、過去1週間に 10人が死亡している。

このことにより、集団パニックを引き起こす懸念もあり、医師たちは当局から市民に対して警告を発するよう求めているが、ベネズエラ政府は警告を最小化している。

政府の無関心とは別に、ベネズエラの医師たちは原因不明の病気と直面しているという非常に危険な状況にある。これが伝染性のある病気である懸念が十分にあるからだ。

ベネズエラ医療連盟の代表であるダグラス・レオン・ネテラ( Duglas Leon Natera )会長は、「現段階で、私たちにはこの病気が何であるのかわからない」と認めた。

最初の患者の症例は、アラグア大学に提出されたデータによれば、初期症状で発熱を示し、その後、皮膚に発疹ができた後に、皮膚に巨大な水ぶくれができ、体内と体外の両方での出血が始まる。

その後、非常に迅速に、患者は、肝不全、腎不全および呼吸不全に苦しむ。

ベネズエラの医師たちはこの病気と戦うための方法がわからず、そして、病気の正体が何であるかを判別することができていない。

検査の中で考えられるいくつかの可能性としては、新しいタイプの非常に深刻な症状を呈するデング熱やチクングニア熱であるということ。そして、もうひとつは、エボラウイルスがベネズエラに出現したという可能性だ。

しかし、ベネズエラ政府はこの「謎の病気」の存在を否定し、この情報は医者から出された「ベネズエラ政府に対するメディア・キャンペーンだ」と非難している。


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